4代目プリウス、好発進を素直に喜べない事情 ほとんどが「走り」を試さずに買っている
人気車の事前受注が積み上がるのは、プリウスだけに限らない最近の傾向だ。トヨタ車では、今年7月に発売した小型ミニバン「シエンタ」は事前受注が月販目標の約2倍の1万5500台、1月の大型ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」は同3倍の計2万1000台となった。
「特定車種に人気が集中する傾向が強まっている。特にハイブリッド車(HV)の人気が高いが、電池の供給をすぐに増やせないことも大きい」と分析するのは東海地方の販社の専務。「トヨタ系の事情で言えば、チャネル併売車種が増えたことで、見込み客を少しでも早く囲い込もうと系列同士の競合がヒートアップしたせいもある」(同)
3万点にも及ぶ部品のサプライチェーンを管理する必要がある自動車ビジネスで、臨機応変な生産台数の調整は難しい。まして、期間従業員も集まらなくなっている昨今、一時的な増産体制を組むのにも限界がある。結果、人気車種では数カ月待ちは珍しくない。
「プリウスの人気には手応えを感じているし、非常にありがたい」と前述の専務。それでも顧客が心変わりしたり、顧客満足が下がらないか対応には苦慮しているという。
北関東の販社社長は「確かに受注は好調でありがたい。反面、それは本当に新型プリウスを評価していただいたものなのかまだわからない」と戒める。
こだわった走りの良さが評価されるか
新型プリウスはEグレードで、ガソリン1リットル当り40.8キロメートルという世界最高水準の超低燃費を実現した。ただし、トヨタがもっともアピールしたいのは燃費性能ではなく、これまでにない走りだ。
「これまでプリウスは燃費はいいが、走りは楽しくないと評価されてきた」と新型プリウスのチーフエンジニアの豊島浩二氏。「新型では走りにもこだわった」
そうしなくてはいけない事情もある。日本に並ぶプリウスの主力市場である米国では、原油価格低下によるガソリン安で燃費性能では消費者にアピールできない。米国市場で幅をきかせるのは、ガソリンをがぶ飲みする大型SUVだ。コストよりも環境を重視する消費者が目を向けるのは電気自動車で、HVはクールではなくなった。もはや「エコ」だけでは売れる時代ではなくなっている。欧州、中でも最大市場であるドイツでは高速走行が中心。燃費特性を発揮できず、HVは普及していない。つまり、走り「も」引き上げないと世界では戦えないのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら