【産業天気図・ガラス/セメント】ガラスは海外と液晶用が牽引し「晴れ」続くが、セメントは燃料高と需要減で「雨」に

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ガラス業界の2007年度後半と08年度は、国内市場は低迷するもののこれを補う事業や地域の有無によって各社の収益はまだら模様。大手を中心に見ればおおむね「晴れ」が続きそう。一方セメント業界は、建築基準法改正の影響で住宅、マンション建設が停滞しているのに加え、好調だった北米の急減速がたたり、前回(9月時点)の「曇り」予想から「雨」へ空模様が悪化する。
 建築用ガラスは欧州の設備投資が活況で、欧州に有力子会社を持つ旭硝子<5201>や06年に英国ピルキントン社を買収した日本板硝子<5202>は、07年度前半は好影響を満喫した。数量そのものは前年横ばいに近いが、価格政策が比較的機能していることから、収益改善が進んでいる。欧州での需要はピークを迎えているようだが、東欧やロシアなどでのインフラ整備にかかわる需要が立ち上がってきている。旭硝子は08年初にチェコ、09年にはロシアに板ガラス新工場を稼働させる予定で、欧州本体から徐々に東に動きつつある需要地域を捕捉する。当面は、東欧やロシアも含んだ拡大欧州での建築用ガラス好況が続く見通しだ。
 だが国内は、まったく逆の状況だ。もともと住宅着工の減少で建築用ガラス市況が弱含んでいたところに、6月の建築基準法改正に伴うビル、マンション建設低迷の影響が07年度後半から出てくる。加えて、燃料高による価格転嫁は進んでいない。08年度も国内不振は続く見込みで、お膝元の不振を海外がカバーする格好になる。業界3位で国内が主力のセントラル硝子<4044>は厳しい状況となる。
 対照的にガラス業界の稼ぎ頭である液晶用ガラスを擁する旭硝子は、ダントツの強みを発揮する。07年度は韓国で液晶用とプラズマ用、台湾で液晶用窯の計3基が稼働予定で、供給力は大幅にアップ。続けざまに08年度も夏頃に韓国で液晶用窯1基が動く。また同年後半に兵庫・高砂工場にも新窯1基が稼働。これはシャープが大阪・堺に建設する液晶テレビ新工場に供給する世界最大の10Gと呼ばれる巨大ガラスを生産する予定だ。そのため、08年度(12月期)の営業利益は過去最高となりそう。液晶用ガラスの需給はひっ迫しており、ディスプレー用ガラス専業の日本電気硝子<5214>も償却負担が重いものの、営業益は続伸の見通しだ。
 一方、セメント業界は民需に引っ張られて国内が活況だった06年度とは様変わりで、建築基準法改正の影響を真正面から受けている。燃料となる石炭の価格高騰も痛手で、リサイクル原燃料による合理化だけでは追いつかない。だが、国内ガラス同様に価格転嫁が進まず、住友大阪セメント<5232>の07年度は営業減益幅が拡大する。これまで米国販売が牽引していた太平洋セメント<5233>も、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した米国経済の減速から、07年度は大幅減益になる。08年度は国内の価格転嫁の進み具合によるが、回復は限定的で、しばらくは「雨」の状態となりそうだ。
【鶴見 昌憲記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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