【産業天気図・化学】引き続き事業分野と品種ごとに明暗あり、「曇り」見通しを継続
化学産業の事業環境には引き続き不確定要因が多いうえ、手掛ける事業分野および品種ごとに明暗があるため、2007年度後半ならびに08年度の天気は「曇り」を継続する。
石油化学の最上流製品のエチレンやプロピレンを手掛ける「総合化学」の三菱ケミカルホールディングス<4188>、住友化学<4005>、三井化学<4183>、旭化成<3407>、昭和電工<4004>(12月決算)、東ソー<4042>という化学大手6社の07年度上半期決算は、総じて原料ナフサ購入価格高騰を販売価格へ転嫁でき、情報電子化学の分野が赤字となった住友化学を除く5社が連結営業増益だった。だが、通期では各社まちまち。『会社四季報』08年新春号(08年第1集)では、前号に比べ営業増益幅が拡大する「増額」となったのは東ソー1社のみ。予想「据え置き」は4社で、うち営業増益は三菱ケミカルホールディングス・旭化成・昭和電工の3社、営業減益は三井化学。そして減益幅拡大で「減額」となったのは住友化学1社となっている。
総合化学のなかでも石油化学の比重が高い三井化学の場合、07年度下半期の原料ナフサ購入計画をみると、1ドル=115円を前提に、1キロリットル当たり価格は上半期実績5万8750円比3250円高の6万2000円、数量は300万キロリットルと見積もられている。そのため、ナフサ高騰による下半期の製造原価上昇は97億5000万円分に達する勘定となる。しかも、実際の三井化学の原料ナフサ購入価格は11月中旬時点において同6万8000円にも達する水準と推定される。12月初旬には原油高一服感が生じたとはいえ、原料ナフサ購入価格の動向次第では、計画以上に製造原価を押し上げる懸念は払拭しきれない。
一方で三井化学の製品販売価格を見れば、自動車用クッション材などに利用されるウレタン原料トリレンジイソシアネート(TDI)には、競合欧米企業の中国工場の稼働不具合に端を発した供給不足による市況高騰の恩恵が残るものの、かたやポリエステル繊維原料である高純度テレフタル酸には、中国現地企業各社の増設を原因とする供給過多による市況低迷が響く。この三井化学に限らず、総合化学各社の石油化学分野の収益は手掛ける品種ごとに明暗が入り組んでいる。
なお、07年度下半期から08年度上半期にかけては、電子機器向け特殊化学品(スペシャルティ・ケミカル)分野では一定程度の北京五輪特需が期待される。例えば、信越化学工業<4063>のシリコン半導体ウエハのうち直径300ミリ品や、JSR<4185>の半導体用感光材料(フォトレジスト)のうちフッ化アルゴン露光向け、住友ベークライト<4203>の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料などだ。
ただ、こうした分野では最終製品の競争激化に伴って販売価格の下落が発生しやすい。それを象徴するのが、07年度上半期に住友化学の情報電子化学分野が営業赤字になる原因となった液晶向け偏光フィルムである。「電子機器向けの特殊化学品は、特定の顧客へ高機能材料を独占供給していても、年率20%の販売価格引き下げが要求され、そこへ同程度の機能の材料を供給できる競合企業が登場するとそれ以上の販売価格引き下げが要求される」(特殊化学品大手社長)という。ここでも、手掛ける品種と納入先企業により明暗がある。
また、08年度は精密化学品(ファイン・ケミカル)分野のうち、医薬中間体・原体・医薬品を手掛ける企業には隔年の薬価引き下げが逆風となりそうだ。
【石井 洋平記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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