原発避難者特例法の思わぬ落とし穴、「学籍」の移動で子どもたちの絆が断ち切られる
新潟市の場合、子どもを学籍の有無によって区別することはなく、特に不便はなかった。その一方で学籍を福浦小に置いていたことにより、当時小学校6年生だった後藤さんの三男は昨年11月に福浦小が開催した会津地方への宿泊体験に参加できた。市立病院が実施している放射性セシウムによる内部被曝を測定するホールボディカウンター(WBC)検査の案内も、福浦小で学ぶ子どもたちと同じタイミングで届いた。
避難した後もPTA会長として南相馬との間の行き来を続けた後藤さんは12月、全国各地に避難している福浦小の子どもたちに「つながりを実感してもらいたい」との思いから、クリスマスカードを贈った。PTA会長を退任した現在は、PTAの経験者として震災の記録となる文集作りに取り組む。
だが、三男が福浦小の在校生でなくなったうえに学籍も移動したことから、「全国に散らばる子どもたちや保護者との連絡が今までにもまして難しくなっている」と実感している。
「連絡の取れない子どもも増えている」と危機感を抱く後藤さんは今年1月11日、南相馬市の教育長宛てに学籍維持の要請文を届けた。東洋経済の取材に応じた後藤さんは、「文部科学省には二重の学籍を認めるなどの特例措置を講じてほしい」と語っている。
■写真:原発事故避難者の集会で発言する後藤素子さん(6月21日)
(※1)東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律
(※2)学籍:児童生徒の氏名や生年月日、現住所や入学などの記録。「指導要録」は学籍に関する記録と指導に関する記録からなる。学校教育法および同施行規則などで、その取り扱いが定められている。
(岡田広行 =東洋経済オンライン)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら