【産業天気図・電子部品】円高など不透明感高まるも、08年度にかけ増収増益基調維持、「晴れ」が続く
電子部品業界の主要各社は依然として増益基調を保っており、来08年度までは全般的には「晴れ」を維持できそうだ。ただ、円高や株安、米国景気減速懸念など腰折れリスクは一段と強まっており、一部企業では収益予想減額の動きも出てきている。警戒を怠れない局面に入ったといえる。
業界団体の電子情報産業協会が調べた電子部品グローバル出荷統計によると、出荷額は2005年3月から直近公表の07年9月まで、31カ月連続の前年比プラスを記録している。スイッチが11カ月連続して前年比2ケタ以上の伸長となっているほか、コンデンサーやコネクター、音響部品、小型モーター、電源部品なども堅調を持続。地域別では、国内向けが軟調な半面、中国・アジア向けが2ケタの伸びを続け、全体を牽引している。
電子部品の需要増大の背景には、主要デジタル製品の市場拡大がある。携帯電話やパソコン、薄型テレビなどのデジタル機器は、途上国へと裾野を広げつつ世界市場を拡大しており、それに伴って電子部品の需要も増大。部品の小型高容量・高機能化、製品当たりの部品搭載量の急増も追い風となっている。電装化が進む自動車向けも、電子部品にとっては大市場へと成長しつつある。
コンデンサー世界最大手の村田製作所<6981>は、08年9月中間決算発表時に今07年度の設備投資計画を2割増額した。需要好調な大容量コンデンサーや表面波フィルターの生産設備を増強するためで、来08年度の需要拡大に自信を示したものともいえる。
一方、夏場以降、米国のサブプライム(信用力の低い個人向け住宅融資の焦げ付きに起因する金融不安)問題を主因とする円高、米国景気の減速懸念が台頭し、先行きへの不透明感も強まっている。電子部品大手は輸出比率が全般に高く、京セラ<6971>やローム<6963>、村田製作所などは、対ドルで1円円高になると営業利益が10億円前後低下する要因となる。今後、1ドル110円を大きく割り込む円高になってくると、各社の収益計画の下方修正は避けられなくなるだろう。最大市場である米国の景気動向とあわせ、要警戒だ。
こうした状況下、『会社四季報』08年新春号(08年1集)では、電子部品大手の今07年度業績見通し(下表を参照)について、アルプス電気<6770>、エプソントヨコム<6708>を除いて各社軒並み増収増益を維持するものと見ている。
前回の07年秋号との比較で増額したのは、任天堂向け部品が好調なホシデン<6804>やミツミ電機<6767>をはじめ、薄型テレビ向けコネクターが想定を上回る日本航空電子<6807>、部材内製化など生産効率化が奏功するローム、超小型水晶デバイスが伸びる日本電波工業<6779>など。一方、減額の対象となったのは、携帯端末向け水晶デバイスの販売価格下落に原価低減が追いついていないエプソントヨコム<6708>、素材高・円高で伸び悩み気味のニチコン<6996>など。京セラもパッケージなど半導体部品が冴えず、米国の携帯電話端末事業も改善が遅れており、「四季報」予想を微減額した。
もっとも、こうした減額組も今のところ今08年3月期は増益を維持する見込みだ。来09年3月期の主要各社の業績予想についても、『会社四季報』新春号では伸びは落ちるとはいえ軒並み増収増益になると予想している。
●主要各社の08年3月期、09年3月期業績予想
(前期比増減率、『会社四季報』新春号予想ベース)
08年3月期 09年3月期
売上高 営業利益 売上高 営業利益
京セラ 4% 11% 5% 3%
<6971>
TDK 0.3% 13% 3% 3%
<6762>
アルプス電気 ▲4% ▲5% 0.4% 14%
<6770>
日東電工 11% 1% 6% 9%
<6988>
日本電産 14% 17% 11% 13%
<6594>
村田製作所 11% 10% 8% 8%
<6981>
ローム 1% 12% 3% 3%
<6963>
ミツミ電機 6% 24% 5% 2%
<6767>
太陽誘電 8% 14% 5% 4%
<6976>
日本航空電子工業 12% 36% 10% 10%
<6807>
日本ケミコン 6% 21% 5% 10%
<6997>
ニチコン 4% 7% 2% 1%
<6996>
ヒロセ電機 6% 3% 6% 5%
<6806>
エプソントヨコム 8% ▲18% 10% 7%
<6708>
日本電波工業 9% 15% 10% 11%
<6779>
ホシデン 28% 44% 3% 8%
<6804>
【中村稔記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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