マイナンバーで「投資税制」はこう激変する 金利税制「天国と地獄」の終わり
例を挙げてみよう。たとえば、あなたがかつての円高時代に外貨建て利付債券(あるいは外貨MMFや公社債投信)をたっぷり買い、現時点で9000万円の未実現利益(含み益)があるとする。ここから年末までのあなたの行動によって、「まったく課税なし」「1800万円程度の課税」「4000万円以上の課税」など、支払う税額がまったく変わってくることはご存じだろうか?
種明かしはこうだ。
2015年末、金利税制の「天国と地獄」が終わる
これまで金利商品の税制は複雑怪奇であり、このような「天国と地獄」が存在した。利付債を償還まで持ち切った場合の利益は雑所得とされ、利益が大きくなれば累進課税によって半分近くを税金として取られた。一方それを途中売却した場合、円安による為替差益も含めて課税されない。「利付債で利益が出たときは償還前に売却する」というセオリーは、投資税制に詳しい人であれば知っているとおりだ。
しかし2016年からの「新しい投資税制」と「マイナンバー導入」によって、「金利税制の天国と地獄」は終わる。というのも、預金を除いた金利商品の多くが「株式の譲渡所得等分離課税」の仲間に入り、株や株式投信と一緒に損益通算したり3年間の損失繰越しをしたりが可能になるからだ。
今回の税制改正により、金利商品を使った非課税(低税率)戦略はほぼ消滅する。利付債だけでなく、割引債・公社債投信・MMFなども大きな影響を受ける。個人投資家は2015年末までに新しい税制への対応を済ませ、投資戦略を大きく変える必要がある。
マイナンバーで投資税制はさらに進化する
これまで個人の投資税制が複雑怪奇だった理由のひとつは、取引と個人の紐(ひも)付けができずに、資産の全容を把握することが難しかったからと私は考えている。国内でキャッシュフローが発生したときは課税可能だが、それ以外は捕捉自体が難しい。過去の事例や租税体系との整合性、他国での取引や公平性に苦心したあげく、「天国と地獄」のような抜け穴が残ったのでないかと思うのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら