連動性高まる世界 パッチワークでない危機の処方箋づくりを
一国では政策を決められない
グローバル化によるマクロ政策の効果の国外流出も厄介な問題だ。QE2により原油などの資源価格が高騰した。しかし、これを共和党の議員や新興国の政府当局者が非難すると、バーナンキ議長はQE2の目的であったはずのインフレ醸成効果を否定、原因は中国の為替政策にあると主張した。一方で銀行の米国内企業への投融資は活発化していない。
01~06年の日本の低金利と円安政策がキャリートレードによって世界バブルの温床となり、グリーンスパンのコナンドラム(FRBが利上げを続けているのに長期金利が下がり続ける)の原因となったという指摘はあるし、97年のアジア通貨危機では自由な資本取引と変動相場制との組み合わせへの疑問も盛んに論じられた。
米国が金融緩和を行うと、ほかの国は対ドルで自国通貨高となることを恐れて金融緩和に追随せざるをえない。本来なら絶えずインフレに配慮すべき新興国で引き締めが遅れがちになり、金融緩和は長期化しがちになる。過剰流動性は収まらない。
各国が大手の投資銀行に公的資金を注入せざるをえなくなったことを受けて、バーゼル自己資本比率規制に代表される銀行監督の強化や、ノンバンクも含めたポジションの把握、リスク量の制限といったマクロプルーデンスも議論された。足元の景気後退を理由に規制強化には反対も多いが、今春発覚したJPモルガン・チェース銀行の巨額損失は、やはり規制が必要なことを示している。
各国政府やG20での協議などを見ても、欧米のバランスシート調整が続く間は金融危機モードであり、その時々の課題への対処で精いっぱいのようだ。しかし、グローバルな経済の連動性の分析や、短期、中期、長期での経済変動への視点を踏まえたパッチワークでない危機防止策、処方箋づくりが必要だろう。
(シニアライター:大崎明子 =週刊東洋経済2012年6月30日号)
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