アベノミクスは所得分配の色を強めている 分配政策に軸足、民主党政策に接近の声も

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第1次安倍内閣でも似たような最低賃金引き上げ政策が実施されたが、日本総研・調査部長の山田久氏によれば、当時は最低賃金が引き上げられた場合、その水準近辺の給与水準で働く労働者の割合が全体の2%程度であり、企業にとって人件費増の影響は限定的だった。

しかし、その後は年々最低賃金が上昇した結果、足元ではその割合が7%程度に上昇、「中小企業を中心に企業への影響は大きいだろう」(山田氏)と見ている。

中小金属・機械メーカー労働組合であるJAM(ものづくり産業労組)では、公正な賃金環境の観点からみても、最低賃金の引き上げに賛成の立場だが「正規社員への給与抑制に何らかの影響が出ないとはいえず、労組としてはその点は監視する必要はある」との見方を示している。

同時に最低賃金が反映されるのは、少なくとも再来年の春闘で、その影響はわからないとしている。

山田氏は「最低賃金引き上げと、成長企業支援策、生産性の低い企業から高い企業への雇用流動化策の3つがセットで打ち出されないと効果は薄い」と指摘。中小企業の生産性向上に加えて、どこまで産業・労働政策の改革に踏み込めるかも問われている。

安倍首相は最低賃金の引き上げとともに、中小企業の生産性向上の支援策も打ち出す方針だが、実際にどのような政策が打ち出されるのか、詳細はこれからの対応待ち。

分配政策に軸足、民主党政策に接近の声も

最低賃金に限らず、今回の1億総活躍社会に向けた安倍政権の緊急対策の特徴は、成長の果実を分配に回し、好循環につなげることを打ち出した点だ。それは民主党政権の政策にも通ずるところがあると、政府関係者自らも認めている。

アベノミクスは、円安・株高といった金融・資本市場面からの環境整備で企業収益を押し上げ、それが消費や設備投資に回る好循環を描いていた。

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