東武鉄道、伝説の「フライング東上号」が復活! 再び行楽特急の夢を見られるか?

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車内に張られた1961年当時の時刻表。休日に走った「ハイキング急行」がずらりと並ぶ

今回のリバイバルカラー車両のうち、50090型の車内には東上線の全線開通90周年を記念したポスターなどが張られている。その中には「フライング東上号」が運転されていた1961(昭和36)年当時の「東上線行楽電車時刻表」や「ハイキング急行電車時刻表」もある。

時刻表には「特急フライング東上」をはじめ、小川町行きの「急行さだみね」、越生行きの「急行かまきた」など、愛称のついた列車が数多く並び、観光客向けの列車が東上線の看板列車だった時代をしのばせる。

一方、50090型が使われる現在の東上線の看板列車「TJライナー」は、通勤客向けの座席定員制列車だ。夕方以降に池袋を発車する下り列車のみ運転されているが、来春からは夕方の増発のほか、平日の朝に2本の上り列車も運転されることになった。

「確実に座れる列車」の人気の高さがうかがえるが、かつての「フライング東上号」のような観光客向け特急や昼間の座席定員制列車は、今のところ運転される予定はない。

沿線には観光資源がいっぱい

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「TJライナー」は有料の座席定員制列車。東上線を走るクロスシートの車両はほかにない

だが、決して沿線に観光資源がないわけではない。最近では蔵造りの町並みの残る川越が「小江戸」として人気を集めているほか、「ハイキングの需要もかなりある」と同社東上営業支社の内倉昌治支社長は話す。

同社で行っているハイキングイベントでは、5000人以上が参加するものもあるという。

最近、特に注目を集めているのは「和紙」だ。沿線の小川町などで古くからつくられてきた手すき和紙「細川紙」が昨年11月、岐阜県の「本美濃紙」、島根県の「石州半紙」とともに「和紙 日本の手漉和紙技術」としてユネスコの無形文化遺産に登録されたため、小川町が「和紙の里」として観光客の人気を集めているのだという。

東武も今年、細川紙を使った記念乗車券を小川町駅で発売した。内倉支社長は「川越までは訪日外国人も含めすでに多くの観光客が来ているが、和紙やハイキングなどの需要をさらに掘り起こし、その先の第2・第3の候補をつくっていくことが課題」と語る。

現在は沿線住民のための通勤通学路線としてのイメージが圧倒的に強い東上線。だが、観光の需要は少なからずあるのも事実だ。鉄道各社がインバウンド需要などを狙った沿線観光に力を入れる傾向が目立つ中、かつてのカラーリング復刻とともに「フライング東上号」のような行楽列車を求める声が沿線などから高まる可能性もあるのではないだろうか。
 

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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