商店街5つが連携、本郷「町おこし」の本気度 実は意外と難しい商店街・町会の連携プレー

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目論見通りにはいかなかったわけである。これについて長谷川さんは想像していた以上に障害が多かったと語る。

「もう少し楽に希望者が見つかるのではないかと思っていたが、春からスタートして決まったのは冬になってから。高齢者側には空室はあっても片付いていないうえ、どんな人が来るのか分からないので怖い、せっかく一人暮らしで気楽にやっているのにまた、食事を作ったりするのは面倒などなどの問題があり、家族の反対もあった。また、学生側は介護が必要になるのではないか、朝起きて倒れていたら誰の責任になるのかなどを懸念していた。同居の前に細かいルールは作ったものの、それだけでは難しかったようです」。

1回目の「ひとつの釜」プロジェクトでは、学生たちがシニアに食事を振る舞った

諦めたわけではなく、その経験を踏まえ、2015年度は新たに「ひとつ釜の飯」なるプロジェクトを始めている。これは学生とシニアが同じ食卓を囲むことで交流を行い、知り合いになってから同居へと進もうというもの。第1回目は学生がご飯を作って、それをシニアに振舞うという形で始まり、会場は満員御礼という盛況ぶりだった。

また、学生と高齢者というだけではなく、もっと広く多世代の共生を進めることを目的に「多世代共生連絡協議会」を設立。この協議会には文京区の社会福祉協議会を始め、福祉、協働推進などに関連する担当などの行政サイドから、高齢者クラブ連合会、町内会長連合会など区内の団体、さらに高齢者問題に詳しい識者、場作りを手掛ける事業者なども参加しており、これにより活動の輪が広がることが期待できる。

地域の課題が複雑かつ多様化、個別化している中、行政だけの対応ではニーズを十分には満たせない課題があることを踏まえ、文京区では3年前から「新たな公共プロジェクト」と名付けた取り組みを始めている。これは区民、地域活動団体、NPO、事業者などを新たな公共の担い手と位置づけ、区と連携して課題に取り組み、文京区の将来を作っていこうというものだ。

街ing本郷も区との協働を行ってきており、多世代共生連絡協議会もそうした流れの一環である。地域の人を核に、社会に関わりたい若い人たちを動力として、区のサポートを受けながら街を横に繋ぐ。街を元気にする仕組みとしては非常によくできているのではないだろうか。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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