急浮上する原子力潜水艦保有論・その可能性は(前編)/太平洋戦争での敗北を逆手にとった中国牽制に有効だ

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原潜はこの問題を解決する。水中でも高速で移動できる。そのため作戦海面までの往復日数を一挙に短縮できるのである。

だから原潜導入論は否定されない。その点で現実的利益を持たない核武装論とは異なっている。実際のところ、原潜を導入すれば作戦は容易となる。なによりも往復日数が大幅に短縮される。

原潜保有のメリットは多いが…

アメリカやイギリスの原潜の例からすれば、作戦海面までの往復速度は時速35km程度である。騒音をたてずに出せる速力の上限はそれくらいと考えられている。それを呉から海南島への展開に当てはめると、従来の2週間が3日半に短縮できる。

当然だが南シナ海での作戦日数も増える。行動日数10週間であれば、9週間を現地での活動に使える。環境改善により行動日数そのものも増加する。原潜では動力の制約がなくなる。そのためお湯や水は使い放題となり洗濯も可能になる。ほかにも二酸化炭素の除去も徹底できる。乗員ストレスの限界が減るため、行動日数は12週間くらいまでは伸ばせるかもしれない。

インド洋での潜水艦作戦も可能となる。そうすれば中国にインド洋での潜水艦対策も強要できる。とくに、ベンガル湾での作戦実施は効果を発揮する。中国にとってマラッカ海峡の延長であり、マラッカ不通時に迂回路となるミャンマー・ランドブリッジの玄関でもある。さらに、ミャンマー上空を経由した巡航ミサイル攻撃も可能となるからである。

往復経路も安全なオーストラリアを大回りに通過できる。最短距離だが浅く、待ち伏せの危険性も残るロンボク海峡を通過しないで済む。

原潜導入にはメリットが多い。そのように結論づけることができるだろう。ただし、だからといって原潜導入が妥当だ、とは限らない。確かに問題解決には適した手段である。ただ、実際に原潜を建造できるかといった技術的問題がある。また、国民が原潜を受け入れるのかといった社会的問題も存在している。

後編に続く

文谷 数重 軍事ライター

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もんたに すうちょう / Sucho Montani

1973年埼玉県生まれ。1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。ライターとして『軍事研究』、『丸』等に軍事、技術、歴史といった分野で活動

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