動力改良の理由も同じである。水中での移動速度を改善して往復日数を短縮し、現地での作戦日数を増やす発想である。そのため「そうりゅう」級は液体酸素を積み、潜航中でも小型エンジンを動かす仕組みとした。「たいげい」級は、搭載電池を大容量かつ短期間で充電できるリチウム電池に改めた。
また、潜水艦の数も一気に増やした。1976年に作戦用潜水艦は合計16隻と決めた。それを2010年には22隻まで増やすこととした。南シナ海への展開から潜水艦を増やす必要が生じたためだ。
冷戦後期の作戦海面は、おそらくだが横須賀から片道で2000km以内にあった。ウラジオストク前面、日本海北部、そしてオホーツク海と出入口にあたる中千島の得撫(ウルップ)水道の辺りだ。その際の必要数が16隻であった。
潜水艦の大型化・増勢の限界
なお、当時の「三海峡を守るために16隻必要」は方便である。国会向けに16隻の根拠を示す、同時に「15隻では不足するので駄目」と言い切る、そのために当時の大蔵省と一緒に考えた、いわば屁理屈である。
それが中国との対峙で変化した。海南島は広島県・呉からでも片道3000kmの距離にある。その上で、南沙まで行けば3500kmともなる。既述したとおり、16隻体制では潜水艦の繰り回しに苦慮する。そのために22隻に増やしたと解釈できるのである。
ただし、大型化も増勢も対症療法でしかない。劇的な改善が見込めるものではない。そのため、潜水艦作戦の不効率そのものは解決していない。水中速力不足から往復で日数を取られてしまう。そのため作戦日数が確保できない問題は今でも残っている。
日本が進める海軍作戦の方向性は正しい。南シナ海への潜水艦展開により中国に力の分散を強要する。そうすれば日本方面に向けた中国海軍力は減少する。その構想はおそらくは正しい。日本海軍の敗北の先例からすればうまくいくだろう。しかし、作戦規模の維持や拡大には窮している。往復日数に起因する不効率から実施上の負荷は大きい。


















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