バランスシートの項目に「種」「酸素」が載る!?会計学者が大胆予測、お金より「水」「土壌」の資産価値が高くなる近未来の経済

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いま見てきたように、会計は「お金で売買できる財」と「お金そのもの」を記録することで、富の分配やパフォーマンスの測定の役に立ってきました。

すべてをお金に換算して客観的に比較、検討することで、意思決定の根拠となるのです。

では、「宇宙の会計」はどうでしょう。同じように「お金で売買できる財」と「お金そのもの」を記録すれば、役に立つデータになるでしょうか。

私は、そうは考えません。地球上での経済活動と宇宙での経済活動では環境がまったく異なるので、生き残るために必要なものも同じではないからです。

地球上の人間社会で生きていくためにいちばん必要なのは、やはりお金だと思われます。「先立つもの」といわれるとおり、企業も個人もまずはお金がなければ行動を始めることができません。

しかし地球を離れてほかの天体で生きていくには、お金以上に「先立つもの」があります。

宇宙の会計でお金以上に記録すべきもの

まず何より 「水」と「酸素」 が必要です。どちらも地球上では苦労せずに手に入れることができますが、ほかの天体ではおそらくそうはいきません。

ただし酸素は、水を電気分解すれば取り出すことができます。ですからいちばん優先されるのは水。地球から近い月や火星でも、経済活動を始めようとすれば、それを獲得することが最初の課題になります。

また、「土壌」も地球とは異なる可能性が高いです。人類が地球と同じような食料を確保しようと思ったら、農業に必要な土壌を手に入れなければいけません。

人間の体内にはだいたい2キログラムのバクテリアがいるそうですから、無機物だけの土壌から人間の食料を生産するのは難しいはずです。そのため地球と同じバクテリアをたくさん含んだ土壌が必要になるのです。

余談ですが、厚さ1センチ分の土壌がつくられるのに、日本では100年かかるそうです。アフリカではさらに時間がかかり、100年で1ミリ分の土壌しかつくられないといいます。

このように、土壌とは想像以上に貴重な資源なのです。

さらに、農作物の生産には植物の「種」 も欠かせません。地球上でも食料ビジネスでは「種」が重要な商品として取引されていますが、宇宙では各自が自分たちの生命を維持するためにそれを大量に確保する必要があります。

その争奪戦は、かなり激しいものになるのではないでしょうか。

さまざまな鉱物資源も重要です。地球でも企業の設備や人々の日用品として多くの精密機器が使われていますが、(特定の病気の人を別にすれば)生きるために絶対に必要というわけではありません。

でも宇宙では、精密機器による生命維持システムなしでは誰も生きていくことができないでしょう。その材料となる鉱物資源も、やはりお金以上に「先立つもの」といえます。

こうして見てくると、いくらお金があっても、宇宙ではビジネスを展開することができません。水、土壌、種、鉱物資源など、お金では買えないものを自力で調達できるだけの能力が求められます。

ですから、宇宙を拠点とする会社の株式市場での価値を測るためには、資源獲得の能力や実績などを客観的に表現する会計データが必要でしょう。

現在の財務諸表にそのような項目はありませんが、何らかの形でそれを「資産」として記録しなければ、宇宙で役に立つ会計にはなりません。

山口 不二夫 明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 専任教授

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やまぐち ふじお / Fujio Yamaguchi

1957年、千葉県生まれ。東京大学経済学部、東京大学大学院博士課程で学ぶ。経済学博士(東京大学)。神奈川大学専任講師・助教授、青山学院大学助教授・教授を経て、2004年より現職。会計の面白さをわかりやすく伝える講義に定評がある。会計理論学会 元会長・現常任理事。著書に『火星の決算日はいつになる? 地球人のための会計入門』(東洋経済新報社)、『日本郵船会計史』(2001年日本会計史学会賞受賞、白桃書房)、『日本の新会計基準』(共編著、東京教育情報センター)など多数。

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