「ディズニーとオープンAIが電撃契約!」→先鋭的にも感じるが、一歩引いて"冷静に見るべき"理由

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世界から1万人以上の映像業界人が集まる、フランス・カンヌのコンテンツ見本市MIPCOMでも、生成AIは主要なテーマの1つです。昨年10月に行われた「AI Hit or Miss」と題されたセッションでは、作品がヒットするのか、それとも不作に終わるのかを、AIで事前に見極められるのかという、実務に近い問いが投げかけられました。

そこで作り手たちが語っていたのは、AIが物語を生み出す未来像というよりも、制作の現場にすでにどう入り込み始めているのか、という話でした。

MIPCOM
フランス・カンヌで開催されたMIPCOM2025のAIセッション。制作現場のリアルな使い方が共有された(写真:筆者撮影)

セッションの冒頭、登壇者が会場に向けて「制作のどの工程でAIを使っていますか」と問いかけると、開発段階で手を挙げる人は多かった一方、撮影現場、ポストプロダクション、配給やマーケティングとなると、手は目に見えて減っていきました。このやり取りだけでも、生成AIの現在地がよくわかります。

ドラマ企画を進めるべきかどうかAIに判断してもらう

こうした工程ごとの使われ方の違いを前提に、「完成前の段階で、視聴者の反応をどう確かめるか」という話題が繰り返し出てきました。企画を本当に前に進めるべきかどうかを、制作前に探る。そのためにAIを使う、という発想です。

その具体例として紹介されたのが、オーストラリアの脚本家による犯罪ドラマの開発事例でした。刑事と相棒の警察犬を主役にした全6話のシリーズで、緊張感ある犯罪スリラーとして成立させながら、人と犬の普遍的な絆をどう描くか。さらに国際市場を見据え、ローカライズ可能な構成も視野に入れながら、AIを使って仮想的な視聴者像をもとに反応を事前に探ったといいます。

「この企画を進めていいのか、自信を持つ後押しになった」。そう語っていた言葉が印象に残りました。作品の方向性を決めるのではなく、進めるかどうかの判断を支える。AIの役割は、あくまでそこに置かれていたのです。

ソーシャルメディアを通じて視聴者の反応がすぐに見える時代になり、大手スタジオや配信プラットフォームでは、データをもとに企画や投資判断を行う動きがすでに進んでいます。

だからこそ意識されているのは、「今、観客が求めていない企画」に時間を費やしてしまうリスクを、できるだけ減らすことです。企画を前に進めるかどうかを早い段階で判断できることは、制作の現場にとって大きな意味を持つようになっています。

こうした議論を通じて見えてきたのは、生成AIで「何ができるか」で語る段階から、「どこまで使うのか」を見極める段階へと、業界の関心が移りつつあるということでした。

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