最初だけ"お金で釣る"と報酬を止めてもジム通いが増えた「意外すぎる実験結果」
インセンティブは、人に新しいことを始めさせ、その行動のストックを蓄積するのに役立つ。たとえばジョンがジムに行くたびに報酬が得られれば、ジム通いを始めるための外発的動機が強くなる。最初は辛くても、やがてその辛さは和(やわ)らぎ、むしろ楽しめるようになる。そして、インセンティブが取り除かれた後でも行動を続ける可能性が高くなる。
次のセクションでは、運動を促進するためにインセンティブを用いた実験について説明し、ジム通いを始めた人に金銭的報酬を与えると、そのインセンティブがなくなった後でも効果が持続することについて説明する。この実験結果は「習慣ストック」の概念を裏付けており、ソファから立ち上がってジム通いを続けると、運動が徐々に楽しくなることを示唆している。そこから明らかになった一般的なルールは、インセンティブは人が行動を始め、行動の「習慣ストック」を築き、それによって長期的な行動にも影響を与えられるということだ。
ちょっとだけご褒美を与える
私のような研究者にとって、論文は自分の子どものように可愛いものだ。論文の執筆過程の細かな出来事は、心の中に鮮明に残っている。私が「運動へのインセンティブ」に興味を持つようになったきっかけは、アリゾナ州ツーソンで催されたカンファレンスに参加したことだった。私は友人のゲイリー・チャーネスと一緒にプールのそばの温水浴槽に浸(つ)かり、アリゾナの雄大な山々を眺めながらインセンティブについて語り合っていた。
私は当時、"インセンティブを金銭的報酬を与えることで、純粋に良いことだと思って何かをしている人の内発的動機がいかに台無しにされうるか"という趣旨の論文を発表したばかりだった。私はとくにゲイリーと、子どもたちの行動を変えるために「賄賂(わいろ)」を使えるかどうかについて話し合った。長期的な問題を起こすことなく、それによって効果が得られるケースがあることは明らかだった。

















