こちらの場合、おかねはどこまで行っても自分(投資家)のおかねであり、決して運用会社のものになるわけではありません。したがって、運用によって儲けが出ても損失が出ても、運用会社にはまったく関係なく、これらはすべて投資家に帰属することになります。そして運用会社は、一定の運用手数料(信託報酬)を、投資家の損益に関係なく受け取ります。
投資信託の分配金はレンタルビデオのポイントと同じ
銀行預金の場合、預金の利息が高くなるということは、極端な言い方をすれば銀行が自分の儲けを減らして預金者に利益を提供するということなのです。したがって、預金者にとっては金利が高くなるのは大歓迎です。ところが、投資信託の場合はどうでしょうか。
もちろん自分が預けたおかねが増えるのはいいことです。投資信託の値段のことを「基準価額」と言いますが、どんな投資信託であれ、基準価額が上昇するということは、自分の預けたおかねが運用によって増えているということですから、いいに決まっています。そして忘れてはならないのが、投資信託の分配金というのは、そうやって増えた自分のおかねから支払われているということです。
別な表現で例えてみましょう。ビデオのレンタルショップで、お店がくれる無料レンタル券を銀行の利息だとすると、今まで自分がレンタルで貯めたポイントを使うことが、投資信託の分配金ということになります。
この違いは、実はとても重要なところです。銀行預金の利息は銀行の儲けの中から支払われ、投資信託の分配金は自分の儲けの中から支払われているということなのです。その証拠に、分配金が支払われると、投資信託の値段は必ず下がります。ところが、この事実を知っている人はあまり多くいません。
一般社団法人投資信託協会が2014年の夏に調査したアンケートによると、「分配金が支払われた分だけ基準価額が下がる」ということを知っている人は、わずか31.2%にすぎません。しかもこれは、投資信託を保有している人に対する調査です。ということは、投資信託を持っている人のうち、約7割の人は「分配金が自分のおかねから支払われている」ということを知らないと言ってもいいかもしれません。
これは、毎月分配型投信がいいか悪いか、あるいは普通分配金はいいけど特別分配金はダメだ、みたいな議論以前の問題です。投資信託の分配金が、結局は自分のおかねをキャッシュで受け取るか、おいておくかだけの違いであるということを、認識しておく必要があります。常識的に考えれば、使わずにおいたほうが増え方も多くなると考えるべきですし、受け取ると税金もかかりますから、受け取らないほうが有利です。
もちろん前述のとおり、儲けたおかねは使いたいというニーズ、そしてそのタイミングを自分で判断するのは面倒だから、少しぐらい高い手数料を払っても定期的に取り崩して分配金が欲しいというニーズも、理解できないことはありません。
ただ、分配金が銀行預金のように運用会社の利益の中からもらえるというものではなく、自分のおかねの中から支払われるのだということを、ちゃんと理解しておくことが大切です。
そのうえで、分配金のある投資信託がいいのか、あるいはないもののほうがいいのか? それは、個人の主義と考え方の問題と言っていいでしょう。
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