レッドソックス・吉田正尚が「ホームランを1本打つごとに10万円寄付」と決めた理由。なぜホームランにこだわるのか?

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2022年10月27日、東京ヤクルトスワローズとの日本シリーズ第5戦。ここまでバファローズは1勝2敗1分だった。2勝2敗のタイに持ち込みたいバファローズは、9回裏の攻撃を迎えていた。得点は4対4、二死一塁の場面で打席に入ったのが吉田だった。

私は京セラドーム大阪の観客席から、その光景を見つめていた。左打席に向かう吉田の姿をじっと見つめる。(打ちそうだ、間違いなく打ちそうだ……)根拠はなかったけれど、私は「ここで吉田が決めるだろう」と思った。

彼の周りにはそんな雰囲気が充満していた。そして、スワローズのクローザーであるスコット・マクガフの2球目、甘く入ったスプリットを叩いた打球は弾丸ライナーとなってライト5階席へと消えた。見事なサヨナラホームランである。

あの瞬間こそ、まさしく吉田が語った「時間が止まった」状態だ。

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「世界のホームラン王」も同じことを口に

あの日、間違いなく吉田は時間の支配者だった。「世界のホームラン王」こと王貞治に、かつてインタビューをした際に、彼もまた「ホームランというのは、球場中の時間が止まる」と口にしていたことを思い出す。

拙著『プロ野球、伝説の表と裏』(主婦の友社)から、王の言葉を引用したい。

「ホームランってね、球場中の時間が止まるんですよ……」
目の前には上品なジャケットを羽織ったノーネクタイの王貞治が静かに座っている。福岡ヤフオク!ドームの一室。会長室に隣接された応接室にはゆったりとした時間が流れていた。王の述懐はなおも続く。
「……時間が止まっている中で、自分だけがただ一人ベースをゆっくりと回る快感。相手ピッチャーはもうどうしようもないんだから。その中で一人だけ動いている。その快感を一回でも多く味わいたいから、僕は練習にものめり込むことができたんだよね」

吉田もまた、王の言う「快感」を、これまで何度も味わってきた。そして、これからも何度でも味わいたい。そんな思いを抱いているのだろう。

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吉田正尚の代名詞であるフルスイング。そしてそこから放たれる大ホームラン。自身にとっても、ファンにとっても、誰もが幸せになれる瞬間が多ければ多いほど、世界各国の子どもたちへのさらなる支援となる。

車は着実に「若者の家」に向かっている。子どもたちとの対面も、あとわずかで実現する。幼い頃に見たテレビ番組に衝撃を受けたあの日から十数年のときを経て、ついに吉田の夢が現実になるときが訪れるのである。

あわせて読む→「夫は相手の立場になって考えることをしない」——レッドソックス・吉田正尚がオフに家族とカンボジアへ。妻が見た、勝負師のチャリティ精神
長谷川 晶一 ノンフィクションライター

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はせがわ しょういち / Shoichi Hasegawa

1970年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとして独立。以後、主にスポーツ(特にプロ野球)やサブカルチャーをテーマに数多くの著作を刊行。2005年から12球団全てのファンクラブに入り続ける「12球団ファンクラブ評論家(R)」としても知られる。

近著に『正しすぎた人 広岡達朗がスワローズで見た夢』(文藝春秋)『神宮球場100年物語』朝日新聞出版)『道を拓く 元プロ野球選手の転職』(扶桑社)『海を渡る サムライたちの球跡』(扶桑社)『プロ野球アウトロー列伝 異端の男たち』(大洋図書)『決断ーカンボジア72時間ー』(主婦の友社)など。

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