レッドソックス・吉田正尚が「ホームランを1本打つごとに10万円寄付」と決めた理由。なぜホームランにこだわるのか?
「せっかく寄付をさせていただくのなら、やっぱり野球に絡めて、それを自分のモチベーションの一つにしたかった。そこで、具体的にどうすればいいかを考えました。やっぱり、野球の魅力はホームランですよね。
どんなに点差が離れていても、ファンの人は大きなホームランを見ると喜ぶじゃないですか。そこで、〝ホームラン1本につき〟というアイディアが浮かんで、この形での支援が決まりました」
身長173センチ、体重85キロ。プロ野球選手としては決して恵まれた体格ではない。ましてや、身長2メートル近い大男たちが跋扈(ばっこ)するメジャーリーグではなおさらだ。「メジャーリーガー」に対して、吉田は自らのことを「リトルリーガー」と称している。
「大谷翔平選手のように、サイズ的にも、能力的にも恵まれたすばらしい体格を持つ選手にすべての力を発揮されたら、やはり身体が小さいことは不利になるかもしれません。
でも、ほとんどの選手は持っている力を十分に発揮できるものではないんです。だから、出力をきちんと上げていけば身体のサイズをカバーすることはできます。出力を上げるためにはしっかりとバットを振ること。これが大切なんです」
出力を上げるべく、彼は全身を使った豪快なスイングを心がけている。吉田が繰り出す豪快なフルスイング。そして特大のホームランは実に迫力に満ち、実に美しい。
鮮烈だったあの日のホームラン
「ホームランってね、時間が止まるんですよ……」
普段は寡黙な吉田が、自ら口を開いた。続く言葉を待った。
「……ヒットももちろん大切だし、打てれば嬉しいんです。でも、ホームランは格別なんです。野球の華だし、自分一人の力で1点、もしくはそれ以上の点が取れる。
試合の流れも変えられるし、球場のムードも変えることができる。時間が止まるし、そのすべてが自分の時間になるんです。それはやっぱり特別なものがありますよ。そして何よりもわかりやすいじゃないですか」
大観衆が見守る中、そこに集った全員が夜空に舞い上がった白球を見つめる瞬間。このとき、球場は一瞬の静寂に包まれ、すべてのときが止まる。
そして、その打球が観客席に着弾する刹那、一瞬にして大歓声に包まれる。興奮のるつぼと化したスタジアムにおいて、吉田は淡々とベースランニングを続ける。彼が口にした「時間が止まる」とは、つまりはこんなことである。
ある「1本のホームラン」が、鮮烈に印象に残っている。


















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