「夫は相手の立場になって考えることをしない」——レッドソックス・吉田正尚がオフに家族とカンボジアへ。妻が見た、勝負師のチャリティ精神

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テレビで震災の爪痕を見て、いても立ってもいられず、ボランティア活動に従事することを決めた。そこに理屈はなかった。彼女にとってそれは、決して他人事ではなく、自分のことのような痛みを伴うものだったからだ。

「私の場合、決して他人事だと思えない性格なんです。だけど、良くも悪くもなんですけど、逆に主人にはそういう部分がないんです。“相手の立場になって考える”とか、そういう部分がないんです。

こんなことを言うと、“他人の気持ちがわからない冷たい人間”のように聞こえるかもしれないですけど、そういう部分があるのも事実なんです。でも、私の場合は逆で、“もし、私が被害に遭ったこの家族だったら……”とか、何でも自分に置きかえて考えてしまう癖があるんです」

ともにチャリティやボランティア活動に関する強い意識を持つ夫婦でありながら、両者の性格はまったく異なるというのが、聞いていて興味深かった。

「夫は、相手の立場になって考えることをしない」と、ゆり香さんは言った。決して嫌味や悪口や自虐のニュアンスはない。率直な感想を述べているだけだった。

そんな性格だからこそ、プレッシャーのかかる大舞台でも重圧を感じることなく、本来の自分の能力を存分に発揮することができるのかもしれない。

けれども、どうしてそんなクールな人間が、プロ入り時からチャリティ活動に対する意識が高く、多忙なスケジュールの合間を縫って「現地の子どもたちに会いたい」と考え、そしてそれを実行に移すことができるのだろう?

相手の立場になって考えることができるからこそ、遠い異国に暮らす子どもたちへの支援もできるはずだ。私にはわからないことだらけだった。

ゆり香夫人の決断

2023年3月29日、ゆり香夫人の公式インスタグラムには、新たな挑戦を始める夫へのエールとともに、自身の率直な思いが綴られている。

私はひとところにとどまっていたいタイプ。
離れる寂しさと、不安とで、期待は1%くらい。
矛盾はしてしまいますが、それでも夫婦で叶えた、まさか叶うとも思わなかった夫が幼い頃から夢に見た舞台US
私も進まねばならぬ!行ってきます

ゆり香さんはハッキリと言っている。「期待は1%くらい」、と。

本音を言えば「寂しさ」や「不安」が圧倒的に彼女の心の中を占めている。それでも、「夫が幼い頃から夢に見た」メジャーリーグへの挑戦を、迷いなく後押しすることに決めた。「私も進まねばならぬ!」と覚悟を決めた。

吉田同様、彼女もまた人生の大一番において、大きな決断を下していた。吉田も、ゆり香さんも「決断の人」なのである。

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長谷川 晶一 ノンフィクションライター

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はせがわ しょういち / Shoichi Hasegawa

1970年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとして独立。以後、主にスポーツ(特にプロ野球)やサブカルチャーをテーマに数多くの著作を刊行。2005年から12球団全てのファンクラブに入り続ける「12球団ファンクラブ評論家(R)」としても知られる。

近著に『正しすぎた人 広岡達朗がスワローズで見た夢』(文藝春秋)『神宮球場100年物語』朝日新聞出版)『道を拓く 元プロ野球選手の転職』(扶桑社)『海を渡る サムライたちの球跡』(扶桑社)『プロ野球アウトロー列伝 異端の男たち』(大洋図書)『決断ーカンボジア72時間ー』(主婦の友社)など。

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