グリーンランド奪取、トランプ米大統領は本気だーー「力が正義となる世界」においてはデンマークが切れるカードはほとんどない
トランプ氏の要求に懸命にあらがうフレデリクセン氏が用いるロジックは的確だ。国際法上、米国にはデンマーク領を奪取する権利はないこと、両国は緊密な同盟国であること、米国の安全を確保するためにグリーンランドを所有する必要はないこと。そして仮に所有を試みれば、グリーンランドに住む約5万7000人の民主的意思に反する行為になると指摘した。
これらはいずれも反論の余地のない事実だ。だが同時に、ベネズエラでの電撃作戦が明確に示した点、つまりトランプ氏はそのどれも気にしていないことを全く考慮していない。
排他的勢力圏
トランプ政権は一夜にしてベネズエラのマドゥロ大統領を排除した。確かに強権的なマドゥロ氏への批判は強く、いわば独裁者が改善の基準として設定していたハードルは、犯罪と言えるほど低かった。
しかし、グリーンランドでは事情が全く異なる。実際、ケーススタディーとして考えるのなら、クリミアと比較した方が有益かもしれない。
クリミアは黒海に突き出た半島で、プーチン氏が2014年にウクライナから奪った。同氏は宣戦布告を除くあらゆる手段を用い、最も真実から遠い理由さえ持ち出しクリミア併合の正当化を図った。
しかし、本当の動機は、ロシアが自らが正当と見なす勢力圏、ひいては帝国の一部と考える地域でロシアの力を誇示すること、そしてクリミアの領海下にある石油・ガス田を含む資源を掌握することだった。
トランプ氏も同様に誤解を招く主張をしてきた。マドゥロ氏が米国向けの麻薬取引に関与していることを理由にベネズエラで行動を起こしたと述べたが、ベネズエラは麻薬取引では取るに足らない存在だ。
トランプ氏はまた、国家安全保障の理由からグリーンランドを所有する必要があるとも主張する。だが、もしそれが本当なら、150-200人ほどしか置いていない米軍部隊をすでに増強しているはずだ。冷戦期には、最大6000人の米兵がグリーンランドに駐留していた。デンマークは、増派提案があれば協議に応じる姿勢を示している。
米空軍の要員は1951年の条約に基づき、グリーンランド北西部沿岸のピツフィク宇宙軍基地で活動している。この条約は、米国もデンマークも北大西洋条約機構(NATO)加盟国であり続けることを前提としている。
しかし、トランプ氏は同盟を重視しておらず、グリーンランド所有を狙う主目的も安全保障ではない。ベネズエラと同様、そしてクリミアでのプーチン氏を連想させるように、トランプ氏が狙うのは資源へのアクセスと、西半球における排他的勢力圏の再確立だ。


















