イクラの価格が平成以降で最高値を記録…しかも「粒が小さくなった」 日本では大不漁でアメリカやロシアからの輸入頼りになった残念すぎる事情

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その地域では河口付近で漁獲してしまうウライを撤去し、直接孵化場に遡上させる方式を実施していました。これにより、産卵間近のサケを捕獲できるため採卵までの時間が短縮され、作業性が向上、経費削減、少人数での作業が可能などの効果があったそうです。

ウライの全量撤去が2020年で孵化は2021年。サケは3~5年で回帰し、その多くが4年で回帰します。このためちょうど回帰量が増えた2025年と重なります。回帰したサケのうちどのくらいが稚魚放流で、もしくは自然産卵かがわかるデータはありません。しかしながら、ウライを撤去するというやり方を変えたことで回帰量が増えているということは、結果から見て自然産卵を重視しているアラスカのケースと一致します。

(出所)さけます・内水面水産試験場 道東支場

上の表は2004年と20年ほど前のデータですが、自然産卵を重視するアメリカ同様の視点での分析結果です。河川回帰率は、自然産卵魚が人工孵化魚の約45倍になっています。ここでわかることは、自然産卵を減らして人工孵化による稚魚放流を増やすという行為は、強いサケを減らし、回帰率が低い弱いサケの比率を増やしてしまうことに他ならないということです。

またアメリカのサケに関する文書「AFFTA Fisheries Fund」には「孵化放流されたサケは、野生のサケより自然環境での回復力が劣るなど生存率が低いことも記録されている」とあります。

イクラの粒が小さくなったのは偶然ではない

北海道のシロサケでは、国際的な水産エコラベルである2011年〜2014年にかけて、MSC漁業認証取得を目指しましたが断念しています。「天然サケの資源量を回復させる方策が実施されていること、そして回復のための増殖はほとんど行われていないこと」とされており、認証取得には自然産卵が少ないということが壁でした。

アラスカ産のベニザケとMSC漁業認証(写真:筆者提供)

MSC漁業認証をあきらめた2014年のサケ類の漁獲量は16.6万トン、そして2025年の漁獲量はその10分の1の1.5万トンとなってしまっています。一方で持続可能となっているアメリカやロシアのサケ漁業はMSC漁業認証を取得しています。これが現実です。

成功して結果が出ている世界の水産資源管理に目を向けず、日本独自のやり方ではさらに悪化するだけです。そしてそれは単に漁業者が、サケが獲れなくなって困るということにとどまらず、地域社会や消費者にも暗い影を落としてしまいます。

イクラの粒が小さくなり、かつ価格が高騰しているのは、単なる偶然ではなく「人災」なのです。魚が減って高騰する負の連鎖を断ち切る必要があります。そのためには、水産業を成長産業にしている国々の成功例を取り入れる科学的根拠に基づく資源管理が待ったなしなのです。

片野 歩 Fisk Japan CEO/東京海洋大学 特任教授

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

東京海洋大学 特任教授。早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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