人手不足を補うための省力化投資、デジタル技術の導入による業務効率化、付加価値の低い業務の見直しなどを通じて、限られた労働力でより多くの価値を生み出す体制を構築することが求められる。
ここで重要なのは、インフレ対策は金融政策だけでは完結しないことというだ。利上げは過剰な需要や投機的行動を抑制するために必要な政策ではあるが、供給能力そのものを高めることはできない。構造改革による生産性の向上こそがインフレ克服の主要な道具である。
AI人材の育成は企業努力だけで解決しない
生産性向上の中核をなすのが、未来を切り開く基盤技術である、AIをはじめとするデジタル技術の活用だ。しかし、この点において日本は深刻な問題に直面している。同分野における人材不足だ。
日本では、生成AI、機械学習、データサイエンスなどを現場で実装できる高度人材の不足が深刻化している。そのため、AIの導入が順調に進まず、これが企業の投資効率や付加価値創出を大きく制約している。そして、経済全体の生産性向上が実現できない。
AI人材の育成は個別企業の努力だけで解決できる課題ではない。教育・研究政策、労働市場政策、産業政策などを横断した国家戦略として位置づける必要がある。
まず第1に、AI導入を阻害している過剰な規制や旧来の業界慣行を見直し、中小企業でもデジタル技術を導入しやすい環境を整備しなければならない。日本経済の生産性停滞の原因は、大企業ではなく、主として中小企業にあると考えられるからだ。
第2に、大学政策の抜本的な転換が不可欠だ。日本の大学は研究資金の過度な分散配分や硬直的な人事制度により、そして何よりも研究資金の不足により、国際的な研究競争力を失いつつある。
こうした現状を改革し、AIや情報分野に重点的に資源を配分し、博士課程学生に対する十分な生活支援を行うとともに、産業界との人材循環を促進する必要がある。大学を「知と人材を生み出す成長エンジン」として再定義することが求められている。
人材育成と並んで重要なのが、企業間・産業間の労働移動を円滑にする制度改革だ。日本の労働市場は長期雇用慣行や年功的賃金制度を通じて、人材が成長分野へ移動しにくい構造を抱えてきた。この結果、衰退分野に人材が滞留し、成長分野では慢性的な人手不足が生じている。
必要なのは、解雇規制や職業資格制度の見直し、リスキリング(学び直し)支援の強化などを通じて、労働移動のコストを引き下げることだ。AI導入を進めても、それを使いこなす人材が適切に配置されなければ、生産性向上には結びつかない。


















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