グーグルCEOは社員6万人の声を聞いている 階層を飛び越えた繋がりが透明性を生む

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誠実性について話をするときに、「何が悪いことか」という視点も重要ですが、その逆に「何が良いことか」という視点もあります。例えば、グーグルにとってみれば、よき企業市民であることは、非常に良いことです。そうしたことも併せて会話をしていくべきだと思います。

私が入社したころ、グーグルはパートナー企業のウェブサイトで広告を提供する事業をやっていました。広告で得られた収入のほとんどが新聞や雑誌などのパートナー企業にいく。グーグルの取り分はものすごく少なかった。ただ、でもそれでもやるべきだとグーグルが考えていたのは、これはパートナーシップでやっているのだし、しかもこれを続けていくことによって、エコシステム全体が大きくなれば、誰もがそこから利益を享受できるようになり、全ての人が最終的には少しずつハッピーになっていくという考え方をしていました。

その当時、CEOが常に言っていたことも、「これはセールスにおけるパートナーシップなんだ」という言葉でした。たとえ競合にサービスを提供することで、その会社が良い会社になっていくということさえ、グーグルは良いこと、正しいことと考えてきました。自分たちが勝つためには負ける企業が必要、という考え方をしてはいないということです。競合他社を支援することによって、例えば相手は20%良くなったのに、グーグルは10%しか良くならなかったというようなことがあっても、それはもう甘んじて受け入れるのがグーグルの考え方です。次回はもうちょっと良くすればいいわけです。成長のマインドセットということで、こうした考え方が浸透しているように思います。

コンプライアンスという言葉で表現されるのは、縛らなくてはいけない側の誠実さだと思います。それに対し、もっとポジティブに考える誠実さもあるように思います。

仕事は会社のためにするものではない

――100万ドルの着服は、誰が考えても悪いことです。しかし、フォルクスワーゲンがデータをちょっと改変したことによって、多くの車を売って、というようなことは、個人的な利益のためにやったわけではないでしょう。会社のためになると思ってやってしまうのだと思います。「会社の業績を良くするためにやる不正」にはどう対処していますか。

グーグルでは、「失敗を責めることはしない」と常に言い続けています。OKR(Objective and Key Result)という形で社員がそれぞれ目標を立てますが、目標の達成度は60%、70%でかまわないのです。失敗を責めるどころか褒めるのは、失敗しないということは頑張っていないから、と考えるためです。

人は失敗することによって初めて学べるのです。そんな雰囲気を作るようにしています。

失敗をすれば会社に迷惑をかけたと考えて、「ああ、やっちゃった。CEOにこれで叱られて失職してしまうかもしれない」と考えるのが普通の会社でしょう。しかし、グーグルでは失敗を恐れないようにしてほしい、と社員をエンカレッジしているわけです。

(CEOの)サンダー(・ピチャイ)と業績管理の話をしたときに、「仕事を社員が楽しんでいないのであればダメだということだよ」というふうに言われたのを覚えています。「失敗してもいい」という考え方は「自分が楽しんでやれることはやりなさい」というメッセージであり、逆に、「乗り気ではないけれども、会社のためにやります」という言い方はさせないということでもあります。

もし会社のためにするにしても、それは正しいことでなければいけないし、自分が楽しみながらやれる仕事でなければいけません。そのあたりの考え方は、社員に浸透していると思います。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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