ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris)--欧州債務危機は、先進国の共通問題《宿輪純一のシネマ経済学》
実はこれがタイムスリップ。作家のスコット・フィッツジェラルド、ゼルダ・フィッツジェラルドが現れ、パーティの主催者はジャン・コクトー。1920年代のパリなのだと認識する。その夜にアーネスト・ヘミングウェイにまで出会ってしまう。
また次の日もプジョーに乗り、ヘミングウェイに連れられてパブロ・ピカソと会う。ギルはなんとピカソの愛人アドリアナのこの世ならぬ美しさに心奪われる。
さらに、その後、いっそう艶やかに輝くアドリアナと再会、真夜中のパリを2人で散歩し、夢のような一時を感じる。しかし、思わず婚約者イネズのことを話してしまい、お別れということに。バーに残され、サルバドール・ダリらと酒を酌み交わす。しかし、そんなタイムスリップの毎日にも終わりが来る。そして、タイムスリップの中に登場する人物たちも、過去がいいと言い、現在はつらい、と言う。
この映画は登場人物が二重に豪華だ。歴史上の人物では、上記のほかにはT・S・エリオット、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、ポール・ゴーギャン、エドガー・ドガなどが、俳優は、キャシー・ベイツ、エイドリアン・ブロディ、マリオン・コティヤール、そして、サルコジ前フランス大統領の奥さんのカーラ・ブルーニまでも登場する。ウディ・アレンの映画は、いつもそうだが、俳優では主役級が多く超豪華だ。
ちなみに、この主人公ギルを演じるオーウェン・ウィルソンの姿は、チノパンやチェックのジャケットといい、満足できない仕事や冴えない人間関系の雰囲気といい、『アニー・ホール』以来のウディ・アレンとダブるものがある。
さて、この映画の舞台は、言うまでもなくフランスのパリである。ウディ・アレンは気分転換のためか、05年以降、ヨーロッパが舞台の映画を連続して撮っている。舞台だけ挙げると、イギリス・ロンドン4本、スペイン・バルセロナ、今回はフランス・パリ、そしてこのあとイタリア・ローマと続く。