「帰省したら冷蔵庫をチェック」→「親の異変を察知」は本当だった。ふとした勘は案外当たる。「あれっ」と思うことがあったらメモを

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では、具体的には、何を観察すればいいのでしょう。老親と離れて暮らす子の立場の人から、「実家の冷蔵庫の中を見て、異変に気付いた」という声を聞くことがとても多いです。AさんとBさんのケースを紹介します。

Aさん(50代)の両親は実家で2人暮らし。どちらも80代です。母親はきれい好きで、いつもキッチンはピカピカ。食器棚や冷蔵庫もキチンと整理整頓されていました。

ところが、2025年の正月に帰省し、Aさんが冷蔵庫を開けたところ、スーパーの総菜パックが無秩序に置かれていました。中には、液だれしているものも。

よく見ると、賞味期限の過ぎた総菜や、カビらしきものが見えるパックまでありました。そして、ズラリと生卵がなんと30個以上!

Aさんは驚き、母親のいないところで父親に「お母さん、大丈夫なの?」と聞きました。父親は、よくぞ聞いてくれた、という表情になり話し始めました。

「もの忘れが多いんだ。先日も、散歩に出て帰ってこられなくて、交番のおまわりさんに連れて帰ってきてもらったんだ」

父親が冷蔵庫の古くなった総菜を捨てようとすると、「あとで食べるの。捨てないで」と母親からきつく言われるそうです。父親は不安を抱えつつ、どうしていいかわからず、Aさんの帰省を待っていたようです。

正月でどこの病院も予約できないため、Aさんはいったん自宅に戻ってから、実家の近くの地域包括支援センターに電話して母親について相談しました。

地域包括支援センターとは、介護・保健・福祉の専門職がチームとなって、高齢者およびその家族からの相談に対応する高齢者のための総合相談窓口のこと。おおよそ中学校区に1カ所あり、住所地ごとで担当のセンターが決まっています。相談は無料です。

Aさんは地域包括支援センターで認知症の専門医を教えてもらい、改めて帰省して母親を連れていったところ、やはり認知症だと診断されました。母親は服薬治療を開始し、介護保険の申請を行いました。

冷蔵庫の中身がすっからかん!

一方、Bさん(40代)の母親は70代、父親が亡くなってから実家でひとり暮らしをしていました。

実家は遠方で、Bさんは帰省に飛行機を利用します。母親は元気に暮らしているようだったので、盆正月に帰るくらいでした。普段は電話やLINEで交流していましたが、特に異変を感じることはなかったと言います。

ところが2024年暮れ、帰省して冷蔵庫を開けたBさんは、思わず「えっ!」と声を上げたと言います。母親は食べることが好きで、いつも庫内には作り置きのおかずやヨーグルト、プリンなどが所狭しと入っていました。ところが、Bさんが開けたときには、中身がすっからかんだったのです。

お節料理は近所のスーパーで注文してくれていましたが、冷蔵室には水やバター、味噌、調味料がある程度。牛乳さえ入っていません。

Bさんは母親の正面に座って、話をしました。「どうしたの?何かあったよね?」と。Bさんの顔が真剣だったからか、母親は観念したように話し始めました。

「ずっと体調が悪く、最近は買い物に出かけることができなかった。あなたに心配をかけたくなかった。買い物に行けない、なんていうと、仕事を休んで帰ってきてくれるでしょ。そんなことをさせられない」と母親。改めて母親を見ると、頬から首のあたりが、明らかにやせています。

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