自動運転はレースで人間を超えられるのか。無人フォーミュラ「A2RL」2年目の進化と、AI同士が生んだ予想外のドラマ
じりじりとした緊迫感のなか、レースが折り返しを迎える10周目に差しかかったころ、ペースが上がらない下位のマシンが周回遅れとなってトップ争いの前に現れた。そしてこれが、このレース最大のハプニングの引き金になった。TUMを従えて首位を力走していたUnimoreが、先ほど見事な追い越しを決めた第1コーナーで急減速した周回遅れのマシンに追突してしまったのだ。
Unimoreの車載カメラ映像を見ると、周回遅れのマシンは遅いペースながら通常のライン取りでコーナーに進入していた。これに対し、Unimoreのマシンはコーナーの外側から追い越す挙動を見せたが、その瞬間、周回遅れのマシンが背後に迫るUnimoreのマシンを認識したのか、突如アウト側に進路変更。それに対応すべくUnimoreも今度はコーナー内側へとステアリングを切り返したものの、間に合わずに接触してしまったことがわかった。衝突で右前輪を失ったUnimoreのマシンは、勢い余ってコーナー外側の緩衝バリアに突っ込みリタイア。追突されたマシンもやはりダメージが大きく、走行不能になった。
一方、僅差でUnimoreを追っていたTUMのマシンは、コーナーに進入する前の段階でUnimoreよりもコーナーの内側にマシンを向けており、アクシデントを回避して首位を取り戻した。
クラッシュしたマシンを撤去する間は、コース上は全域でイエローフラッグが振られ、各マシンは低速で順位を維持して周回を重ねた。ところが、ここでもまたドラマが起こる。Unimoreの脱落によって2位に順位を上げたKinetizチームのマシンが、13周目に第3コーナーを抜けた先で突然スピンしてしまったのだ。これは、低速走行によってタイヤが冷え、路面のグリップが低下したせいだった。
コース上に停止したKinetizのマシンはほどなくしてまた走り始めたが、走行を続けている中では最下位となってしまった。
レースはその後15周目から再開され、12周目以降トップをキープし続けたTUMチームが、2位に47秒の差を付けてチェッカーフラッグを受け、優勝カップを手にした。
すべてが自動運転AI開発の糧に
今回のレースでは、周回遅れのマシンによるイレギュラーな挙動が、トップを走っていたマシンとの事故を引き起こしてしまった。また、一見安全に思える速度で走行していたマシンが突然スピンするというトラブルも発生した。
こうした出来事のすべてが、予想外の事態にも即座に対処可能な自動運転システムの開発における教訓になることは間違いない。
そして、A2RLの自動運転AIがわずか18カ月間で、段違いに運転技能を高めてきたことにも注目せずにはいられない。決勝レース当日に行われた元F1ドライバーとの模擬レースではまだまだ胸を借りているような状況だったが、いまの開発ペースが続くのなら、数年後には本当にプロドライバーよりも速く走る自動運転マシンが現れる可能性もありそうだ。
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