自動運転はレースで人間を超えられるのか。無人フォーミュラ「A2RL」2年目の進化と、AI同士が生んだ予想外のドラマ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また、鈴鹿にマシンを持ち込んだTII Racingのジョバンニ・パウ代表は現地で次のように語った。

「私の考えでは、自動運転AI開発の最終目標は、非常に過酷な状況、非常に困難な状況でも車を制御できることだ。車にそのような状況を認識する方法を教え、それが完成したら、こんどはそのためにやったことすべてを市販車に還元していく。想像してみて欲しい。運転中にあなたが見えていなかったものを車が認識し、あなたが気づかなかった障害物に車が気づく。そうやって、知らぬ間に自動車があなたの命を救うようになる」

「われわれは自動車の運転を人々から奪おうとしているわけではない。運転はとても楽しいものだ。だからわれわれは、ドライバーのミスを補うことを目指しているのだ」

前年から飛躍的な進歩を見せた予選

鈴鹿でのデモンストレーション走行実施後、A2RLはほとんどイベントやメディア露出がなかった。だが、2025年に入ってからは「EAV25」と称する新しいマシンが用意された。

このマシンはスーパーフォーミュラSF23をベースとする点に変わりはないが、自動運転システムが新しくなり、LiDARシステムとレーダーシステムをそれぞれ3基ずつ、7台のカメラと2基のGPSアンテナが、コクピット部分に搭載されたAIコンピューターシステムに接続される。

また、7月から9月にかけては前年度から引き続き参加した7チームが、メタバース空間に構築された仮想のサーキットで全4戦にわたるシミュレーションレース「SIMスプリント」を戦い、互いにAIプログラムコードを洗練させていった。

マシンの走行データ画面
マシンの走行データ画面(写真:A2RL)

2025年11月にヤス・マリーナ・サーキットで開かれる第2回大会には、新規参戦の3チームを含む、全11チームがエントリーした。そして、大会に先駆けて1周約3kmのショートコースを使った予選ラウンドが行われた。

この予選ラウンドでは、まず各チームが複数のマシンで同時にサーキットを走行するための能力を備えているかを確認する「クオリティゲートウェイ」と呼ばれる予備試験が行われた。ここで要件をすべて満たした6チームが、11月15日のメインイベント「ゴールドレース」への出場を決め、残りは同日に単独走行のタイムアタックで順位を決める「シルバーレース」へと振り分けられた。

この予選には、日本からの新規参戦チームとしてTGM Grand Prixも出場していた。TGM Grand Prixは予選タイムアタックでは上位チームに遜色ないタイムを記録したが、半年という短い準備期間での参加だったこともあり、AIプログラムが高速走行時の追い越しに対応しきれず、シルバーレースに振り分けられることになった。だが、同チームは11月15日に開催されたシルバーレースで他のチームを圧倒する走りを見せ、部門優勝を果たした。

次ページおよそ1万人もの観客が詰めかけた2年目の決勝レース
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事