JR東日本「ラグビーリーグワン参入」までの全内幕 NECから「グリーンロケッツ東葛」運営を来季譲受
この頃、NECは長期的なチームのあり方について検討を重ねていた。森田隆之社長は「社員の一体感の醸成、士気高揚のため文化・体育活動の一環としてチームを運営してきた。同僚選手の粘り強いひたむきなプレイに、応援する我々も勇気をもらってきた」と話す。だが、チーム運営をめぐる状況が昔とは変わった。
リーグワンに所属する選手の契約は母体企業やグループ企業が雇用する「社員選手」とプロ選手にあたる「業務委託契約選手」に大別されるが、上位チームほど戦力強化のために世界トップクラスの選手をプロ契約で迎え入れている。このため人件費が高騰し、D1に所属するチームの運営費は年20億円規模と言われる。
一方で、年間に行えるのはわずか十数試合。激しいボディコンタクトが行われるラグビーは回復に時間がかかり、試合間隔を1週間程度空ける必要があるのだ。試合数が少ないことから入場料収入だけで費用をカバーしきれず、チーム運営には母体企業の支援が欠かせない。
B to B企業には費用対効果が薄い
過去には「宗像サニックスブルース」が母体企業の業績不振を理由にリーグワンを退会し、活動を休止した例がある。しかしNECは違う。2024年度の当期純利益は過去最高となる1751億円。業績的には申し分ない。
NECは譲渡の理由を、「同僚選手の応援を通じた従業員の一体感醸成や士気高揚というチーム保有の目的と、勝つためにはプロ選手の拡充が必要というチームの方向性の乖離が大きくなった」と説明する。
加えて、NECのビジネスがB to Bへシフトする中、B to C向けの広告宣伝効果を期待できるスポーツビジネスは積極的に取り組む領域ではないという判断も働いた。つまり、B to C企業であればチーム運営費用は広告宣伝のための投資として許容できる面があるが、B to B企業のNECは費用対効果が薄いということだ。「今後も長期的にチームのベストオーナーであり続けられるのか」(森田社長)。その結果が8月20日の発表だった。



















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