JR東日本「ラグビーリーグワン参入」までの全内幕 NECから「グリーンロケッツ東葛」運営を来季譲受

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さて、ここまで譲渡の経緯について触れてきたが、なぜJR東日本はその決断をしたのだろうか。喜㔟社長は「チーム拠点が当社の事業エリアにあること」を大きな理由として挙げる。「8つの自治体の連携協定はしっかりと引き継ぐ」という点も強調した。

チームは連携協定に基づき、地域の小中学校を訪問して食育に関する授業やラグビー体験会を行うなどの活動を欠かさない。「地域との連携、企業スポーツを通じた地域の諸課題の解決、アスリートの情報発信による健康増進、こういったことに当社は従来から力を入れており、今後はラグビーというチャネルを使って強化できる」(奥村氏)。NECとは違い、B to C企業のJR東日本は費用対効果に見合うと考えたわけだ。

JR東日本はチーム引き受けの目的が8つの自治体を中心とした地域社会への貢献であるとするが、一方で、同社の赤字ローカル路線の中には、今後の輸送のあり方をめぐって沿線自治体と協議している路線もある。こうした沿線の住民はどう考えるか。その点を同社広報部に尋ねると「東葛の引き受けは社会貢献の一環。目的の部分が違うとご理解いただきたい」と回答した。確かに企業の営業活動と社会貢献活動を混同すると両者ともに方向性を見失いかねない。

グリーンロケッツ東葛 試合
NECグリーンロケッツ東葛の試合(昨シーズン)の風景(写真:NEC)

東日本エリア全体の活性化を

とはいえ、人口の多い首都圏でラグビーによる地域振興が行われる一方で、人口の少ない地域では将来の輸送のあり方が協議されるという濃淡が出るのはどうなのか。

リーグワンにはホストエリアに加え、その補完としてより広範な地域で試合ができるサブホストエリアを設定できる制度がある。そこで、8自治体のホストエリアは維持したうえで、東日本の一部の地方都市あるいはエリア全体をサブホストエリアにして、より広範な地域で社会貢献を目指すというのはどうだろう。この点についてJR東日本は「まずホストエリアを円滑に引き継いでいくことを考えており、サブホストエリアの検討は今後行っていくことになる」と否定はしない。

2035年のラグビーワールドカップの開催地として日本は立候補を表明している。喜㔟社長も「日本開催に向けた機運醸成に寄与していきたい」と意気込む。東日本全体をラグビーで活性化させることは何よりの後押しになると思うがいかがだろうか。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げ。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に定年退職後の現在は鉄道業界を中心に社内外の媒体で執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京交通短期大学特別教養講座講師。休日は東京都観光ボランティアとしても活動。

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