《老後は都会生活が便利》投稿に地方民が猛反論、「電車の待ち時間がムダ」「荷物を車で運べない」との声も…"泥仕合"の中で見過ごされる視点

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ここまで書いてきたたようなことは、現在普及が進んでいる宅配サービス等で解消されるかもしれない。ただ、問題は「最低限の生活がどうのこうの」というより「生活の質(いわゆるQOL)が担保されるか」である。

いくら宅配サービスが進んで、最低限のモノが手に入るとしても、地方で家から出られないのでは、精神的に老け込んでいく。都心部でも、食べるのに困らなくてもコミュニティがなければ、孤立していく。いずれも「元気」でなければ、精神的な充足度は著しく下がっていくのである。

「LUUP」しかり、さまざまな取り組みはあるけれど…

論争の元になったポストでは「都心部では歩くから健康になる」という話であったが、高齢になればどうしても体力低下はつきもの。だからこそ都心部に住んで健康になろう、という話なのかもしれないが、そもそも気力がなければ外に行こう、という気持ちにもならない。

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鶏が先か卵が先か、的な話だが、結局のところ、「高齢者になると、都心だろうが田舎だろうが住みづらくなる」というのが真実なのかもしれない。

ちなみに、電動キックボードでおなじみのLUUPは「都心部でよく見る乗り物」だと思われているが、実は地方部にも展開しようとしている。現在、同社は小型の三輪車を開発しており、2026年度中にも実証実験が複数地域で始まる。免許の扱い等がどのようになるのかにもよるが、地方で「近所のスーパーまで1キロぐらい」という高齢者にとっては、ちょうどいい選択肢になるかもしれない。

ただ、皮肉なことにLUUPは都心部では「元気でやんちゃな若者」が無茶な使い方をしていたり……なんてこともあって、評判はあまり芳しくない。LUUPはもともと、この高齢者向けの乗り物を展開することを目指していたのだが、その前の部分で思わぬ障壁にぶち当たっている感もあり、どうなるかはわからない。

LUUP
都心ではお年寄りがLUUPを運転している姿はほぼ見られない(画像:おくやまひろし/PIXTA)

いずれにせよ、今回の論争を見ていて、改めて「高齢者にとって都市・地方はどちらが住みやすいのか」という問題には、根深いものが潜んでいることを再認識した次第である。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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