この作品のネタバレをしてしまうのですが、物語の主人公は、中年になり、人生の多くを失ってしまった男性です。
ホームレスのような生活をしている彼は、27年前の世界に戻り、当時の自分が「駆け落ち」という無謀な選択をしようとしているのを、必死になって止めようとします。
「裕福な暮らしをしていた自分の人生が今こんな落ちぶれた人生になってしまったのは、あのときの家を捨てて駆け落ちするという選択が間違いだったからだ」と信じているからです。
しかし、若い彼に事情を説明しても、彼は聞く耳を持ちません。その話が真実だったとしても、自分はあの子と行くんだと言って、未来の自分のことを否定します。
「ぼくはゆるせないぞ。自分がそんなにみにくくおいていくことを‼︎」
どれだけ未来の自分が止めようとしても、若い頃の主人公はまったく言うことを聞かず、その情熱だけを燃やして突き進んでしまう。結果として過去は何も変わらないまま、彼は現在へ戻ってきます。
ところが、物語はそこで暗く終わらないんです。現在に戻った主人公は、ふとこう思うのです。
「それにしてもあいつ、燃えていたなぁ。あれが俺のかつての姿だったんだ」
そう思って、主人公は歩き出しました。今からでも、何かやってみよう。俺だって、まだまだこれからだ、と。過去を変えることはできなかったけれど、「過去の自分」から強烈なエネルギーをもらい、未来へ向けて歩き出す。そんな結末でした。
この物語を読んだ瞬間、浪人して不安に押しつぶされていた僕の心に、何かが入ってくるような気がしました。
藤子・F・不二雄のSF漫画から僕が受け取ったこと
この物語から僕が受け取ったことは2つです。
1つは、「今の自分は過去の自分によって作られている」ということ。いま僕たちがここに立っているのは、過去の自分が必死で頑張ってきたからです。あの日やった参考書1ページ、眠い中で踏ん張って解いた問題、涙をこらえて続けた勉強。それら全部が、バトンのように“今の自分”に渡されてきたわけです。
だから「もし、今ここで頑張ることを投げ出してしまったら、過去の自分に怒られるんじゃないか」。そんな気がしませんか?


















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