ドコモ社長「料金問題はMVNOを含めて議論を」 現在の料金体系も十分に配慮している

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 11月13日、NTTドコモの加藤薫社長はロイターのインタビューに応じた。写真は都内で2012年7月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 13日 ロイター] - NTTドコモ<9437.T>の加藤薫社長は12日、ロイターとのインタビューで、総務省の有識者会議が携帯電話料金の値下げ策を議論していることについて、格安スマホサービスを提供しているMVNO(仮想移動体通信事業者)を含めて議論する必要があるとの認識を示した。

議論の行方によっては対応を排除しないとしたものの、現状の料金プランでも十分配慮しているとして、大手キャリアとMVNOとの棲み分けにより問題を解決できるとの本音をのぞかせた。

ドコモは有識者会議のヒアリングで料金体系について、1)長期契約者の満足度が向上するメニュー、2)比較的利用の少ない契約者が選びやすいメニュー──を検討すると表明している。

インタビューの詳細は以下の通り。  

──総務省の有識者会議では、現在の料金体系が高すぎるというだけでなく、データ通信をあまりしないライトユーザーや長期ユーザーにとって不公平だとの指摘が出ている。

「新料金プランでは最大2000円の長期割引をしているほか、ポイントサービスでも長期ユーザーは特典を付けており、考慮している」

「(ドコモ、KDDI(au)<9433.T>、ソフトバンクの)3社だけをみると、高いという言い方があるかもしれないが、一方でMVNOがある。少し制限があるかもしれないが安いというのも1つの選択肢であって、それも含めた形で議論していただくとありがたい」

──有識者会議の結論によって対応するのか。

「何が出てくるかわからないので、それは排除できない」

──昨年導入した新料金プランは1000億円超の減収要因となった。現状は。

「(減収要因は)半分くらいに軽減されている。もうすぐ戻ってくるとみており、その意味では通信事業は回復している。プラスに転じるのは来年度くらいになると思う」  

──ただ、音声プランに関してはかけ放題の2700円に加え、1回5分以内の通話がかけ放題となる1700円のライトプランを導入した。プラスに浮上する時期が後ずれしたのではないか。

「新規契約のうちの3割くらいがライトプランに加入しているが、業績への影響はそれほど大きくない。利益に対しては2桁億円のマイナスだが、それは吸収して(今期営業利益予想の)7100億円はキープする」  

──有識者会議が立ち上がった背景には、携帯電話会社は儲けすぎとの批判もある。携帯電話会社にとっての適正利益とは。

「原則を言えば、企業は付加価値を提供して利益を得る。利益を得なければ、社会の役に立てない。設備産業だとネットワークの整備すらできない。一方でお客様、パートナーの満足度が向上するような仕組みも必要で、そのバランスだと思う。1兆円儲けるとけしからん、9000億円ならいいとか、そういう議論ではない」

──通信料金はどうあるべきか。電波の有効活用の面では従量制が望ましいが、固定制は時間を気にしないでネット接続できるため、その環境を利用したサービスを提供するIT周辺産業が潤い、経済を押し上げる力にもなる。

「安いに越したことはないが、ネットワークの整備をして、世界に冠たる速さと広さ、深さを維持しなければならない」

「一方で、現在、通信料金は全部利用者が払っていて、例えば映像を流す人はタダ、ある種フリーライドしているという問題もある。(ネットワーク上でサービスを提供する)OTTと呼ばれる方々もそう。ブロードバンドはタダで、こちら(通信事業者と利用者)だけが負担しているというのは考えてみれば変な話だ」

──自ら第2ブランドとしてMVNOを手掛ける計画は。

「自己矛盾を起こす。お客さんからみたときには第2ブランドは理解しにくい」

──M&A(企業の合併・買収)の可能性について。

「国内、国外一緒だが、いい案件があればぜひ積極的にいこうと思っている」

──海外キャリアのM&Aも視野に入っているのか。

「突然キャリアというわけにはいかない。いまは(価格が)高い」

──日本は人口減少時代に入り、持続的成長を維持するためには、ソフトバンクのように海外に打って出ることも必要なのではないか。

「確かにその側面はあるが、少子高齢化だからこそ、ICT(情報通信技術)で効率化して社会を支える、社会的な課題を解決していくという側面がこれからさらに強くなっていく。そこで役に立ちたい。(ICTは)国内の生産性をあげていく大きなツールだし、われわれはその使命を負っていると思っている」

 

(志田義寧 山崎牧子)

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