規模だけでは勝てない、明快な戦略が必要だ 日産のカルロス・ゴーン社長兼CEOに聞く

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Carlos Ghosn 1954年ブラジル生まれ。仏ミシュランを経て96年ルノー入社、上席副社長。2000年日産社長、01年からCEOも兼任。ルノーでは05年社長兼CEO、09年から会長兼CEO。
日産自動車は2012年3月期決算で、トヨタ自動車を抜いて純利益で業界トップに立った。1999年の仏ルノーとの提携以降、企業体質は大きく転換。16年度までにはグローバル市場占有率8%(11年度6・4%)、営業利益率8%(同5・8%)の達成を目指す。カルロス・ゴーン社長兼CEOにさらなる成長への課題を聞いた。

──日産はこの13年間で本質的に何が変わったのですか。

かつての日産にはなかった、三つの要素が育まれた。まず明快な戦略を持ち、これを全社で共有していること。しかも戦略に一貫性がある。社内の各部署、地域の足並みがそろっており、社員が戦略の優先順位を理解し、参画意識を持っている。

第二に00年初めのリバイバルプランやその後の計画を通じて、いい意味の危機感を持つようになり、日産は危機に対する対応力を身に付けてきた。だからこそ、東日本大震災やタイの洪水など未曾有の危機に、スピードを持って対応できた。

第三には新興国でローカル化が進んでいることだ。現地の経営陣が、現地の部品メーカーを使い、現地に適した商品を造る。日産はトップの100ポストのうち、4割を日本以外の12カ国の出身者で占める。多様性が大きな武器になっている。

ブランド力向上のカギは三つ

──最大の経営課題は。

ブランド力の向上に尽きる。決して全般的に弱いというわけではない。だが、地域で見ると、中国やブラジル、ロシアなどではブランド力が強い一方で、米国では競合他社より劣っている。日本を含めて、地域によっては改善が必要だ。

 ──高級車ブランド「インフィニティ」については、16年度の販売台数50万(11年度は約14万台)を掲げています。ただ、これまでもインフィニティ強化を掲げながら、なかなか実現できませんでした。

達成へのカギは三つある。まず商品の拡充。今年中国市場ではロングホイールベースの「M」を投入する。中国ではロングホイールが好まれるからだ。二つ目は現地化。これまでインフィニティは日本の栃木工場で生産してきたが、今後は栃木が主な拠点ではなくなる。先日発表した中国のほか、他国でも生産を始める。第三に販売網に手を着けながら、ブランド向上に取り組む。

4月、香港にインフィニティの新しいグローバル本社がオープンした。高級車でも最大市場となる中国の動向を感じることが一つの狙い。そして世界中から人材を集め、多様化したチームを新たに発足させる。高級車でも現地化は不可欠。競争に勝つにはコストだけではダメだが、コストで不利だと勝つことはかなり難しい。現地化は基本条件だ。

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