「いま私は夢の国におります」 朝ドラ「ばけばけ」小泉八雲が来日早々に職を失ったワケ

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「日本へ行ってみたらどう?」

ハーンにそう勧めたのは、『ハーパーズ・マンスリー』の美術主任の記者ウイリアム・パットンである。シンシナティにいた頃すでに、ハーンは日本に関心があったようだ。ハーンの書いた記事から、そのことがうかがえる。

日本行きを決意したハーンは、モントリオールから「ヨコハマ」という名前の寝台車で、バンクーバーへと向かうと、そこからさらにアビシニア号に乗り込み、太平洋をわたって横浜を目指した。

横浜に到着後、ワトキンに宛てて出した手紙では、こう綴っている。

「いま私は夢の国におります。──異国の神々に囲まれて。私はどこかで以前にこれらの神々を知り、愛したことがあるような気がします」

朝ドラ「ばけばけ」では、ヘブン先生が「これからも鳥のように彷徨い続けるでしょう」と言って、今いる場所の滞在もまた長くはないことを示唆する場面があった。だが、実際のハーンは、1890年4月に来日してから生涯を閉じるまでの14年あまりを日本で過ごす。

来日後すぐに無職になる

そんなこととは夢にも思わず、ハーンは日本に着くやいなや、ハーパー社に絶縁状を書くという驚くべき行動に出ている。日本への旅には、ハーパー社の挿絵画家ウェルドンが同行していたのだが、彼のほうが自分よりも多くの報酬を受け取っていることに、ハーンは激怒したのである。

ハーパー社の仕事で日本に来ているのに、早々と決別してしまったハーン。いきなり職を失うことになった。

だが、ハーンはまたもや自らの行動で道なき道を切り拓く。

東京帝国大学の教師を務めるバジル・ホール・チェンバレンに就職のあっせんを依頼。チェンバレンからハーンに紹介されたのが、松江市にある島根県尋常中学校および師範学校の英語教師の職だった。

【参考文献】
E・スティーヴンスン著(遠田勝訳)『評伝ラフカディオ・ハーン』(恒文社)
牧野陽子著『ラフカディオ・ハーン-異文化体験の果てに』(中公新書)
遠田勝著「書簡が語る八雲の生涯」『無限大 №88』(日本アイ・ビー・エム)
小泉八雲著、池田雅之編『小泉八雲コレクション さまよえる魂のうた』(ちくま文庫)
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』‎(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
工藤美代子著『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日新聞出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

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