「高速道路=緑」とは限らない?「標識の色」に表れる地域性や歴史的背景がおもしろい!

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上から2番目の「Channel Tunnel」は、英仏海峡トンネルのことで、乗客を運ぶユーロスターのほかに、車運搬用のシャトル列車(ユーロトンネル・ル・シャトル)が運行されており、列車にクルマを乗せてフランス側のカレーまで運んでもらえる。

ここまで見てくるとヨーロッパは青一色のように思えるが、実はヨーロッパの主要国でも、青色ではなく日本と同じ緑色を採用する国があった。

イタリアである。かの国で撮影した高速道路の写真を何枚か確認したが、すべて日本やアメリカと同じ緑色であった。

イタリアの高速道路標識(筆者撮影)

国境に接するフランスもオーストリアも「ヨーロッパ色」といってよい青色である。ところが調べてみると、イタリアの北に接するスイスもイタリアと同じ緑色であった。

フランスの高速道路標識(筆者撮影)

さらにイタリアの東に接するスロベニアとそのさらに東のクロアチア、そしてオーストリアの北に接するチェコも緑色。つまり、ドイツやフランスが青色だからといってヨーロッパ全体が青色というわけではないのだ。

余談だが、イタリアの中に離れ小島のように存在するサンマリノ共和国への入国時、「国境」にあった世界遺産「サンマリノ歴史地区」を示す標識は、濃い褐色というちょっと不思議な色であった。

サンマリノへの標識(筆者撮影)

スペインで見かけた日本にはない標識

それぞれの国が、その色を高速道路の標識に採用した理由は定かではないが、色の分布をあらためてマッピングするだけでも、想像力の翼が広がりそうだ。

道路で世界を2つにわける基準として、右側通行か左側通行かというわけ方もあるが、この違いと標識の色の違いに共通点があまりなさそうなのもなんだか不思議である。

最後にひとつ、日本では見られないちょっと珍しい標識を紹介したい。

スペイン南部の高速道路標識(筆者撮影)

これはスペイン南部の高速道路を走行中に遭遇した標識である。「meridiano de Greenwich」の文字が書かれていて、地図に黄色で弧が描かれている。

この標識が示しているのは、「グリニッジ子午線」だ。つまり、東経・西経ともに0度の地点に立てられたものである。

この標識より、東は経度が「東経」になり、西は「西経」となる。別にここで景色が変わるわけではないが、自分でハンドルを握ってグリニッジ子午線を超える体験はささやかな興奮をもたらしてくれた。「たかが標識、されど標識」である。

【筆者撮影】世界を巡って撮影した23の高速道路標識を見る
佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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