「不倫された側が文句を言うならわかるが…」「視聴者に言う権利があるのか」 日本人は「ネトフリで禊」の異常さをわかってない

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規則・ルールを重視する傾向が強い日本

逸脱者や抜け駆けに対する不快感や怒りが反動的に生じやすくなっており、不倫だけではなく、違法薬物の使用に関するスキャンダルも含めて逸脱行為そのものが罪深く、罰すべき対象とみなされるのである。そもそも日本は、以前から規則・ルールを重視する傾向が非常に強い。

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モラルジレンマをめぐる国際比較の調査では、信号無視をしている歩行者について「死んでも仕方がない」と考える傾向が、日本などの一部の国が他国に比べて強いことがわかっている(Self-driving car dilemmas reveal that moral choices are not universal/Nature/2018年10月25日号)。

とはいえ、わたしたちは、前述の自己管理能力が失われる恐れと戦いながら、社会の閉塞感に息苦しさを感じてもいる。その真因はまさしく拡張された「世間」と「健全化」へのあくなき固執のせいでもあるのだ。

しかも、この固執を浮き彫りにする一助になったのは海外の配信サービスという本物の「タニン」「ヨソのヒト」であったことは、大いなる皮肉といえるだろう。Netflixにとってグローバル市場こそがその中心にあり、日本の狭い「世間」の諸事情などはほとんど考慮の外とされるからである。

わたしたちは、このような日本の特殊性に基づく不祥事のサーカス(見世物)化が、ただでさえ窮屈な社会状況をより窮屈なものに変えていることにもっと目を向けるべきだろう。ほかならぬ部外者によって照らし出されている現実が、笑止千万なものになっているという事実に。

真鍋 厚 評論家、著述家

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まなべ・あつし / Atsushi Manabe

1979年、奈良県生まれ。大阪芸術大学大学院修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。 単著に『テロリスト・ワールド』(現代書館)、『不寛容という不安』(彩流社)。(写真撮影:長谷部ナオキチ)

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