「時給は約3900円」目的は"ブルーカラービリオネア"だけじゃない 大卒アメリカ人男性(24歳)がスキー場での肉体労働に賭けた未来
こうしてメルビンさんは職場で順調な日々を過ごしていたが、今年10月、仕事中に事故に遭遇した。施設の駐車場に停車中の誰も乗っていないスノーキャット1台が、凍った地面を勝手にスライドし出し、他のスノーキャットに近づいていった。
「50万ドルのマシンが互いに接触して壊れたら大変なことになる」と思ったメルビンさんは、とっさに近くにあった木片を掴み、スライド中のスノーキャットの車輪の下にその木片を噛ませて停止させようとした。
その途端、トラック5台分の重さのスノーキャットが木片を木っ端微塵に砕き、手袋をしたメルビンさんの右手の上で止まった。慌てて右手を手袋から引き抜くと、薬指の第一関節の肉や皮膚が溶けてなくなっており、血だらけになった指先を見ると白い骨が突き出ていた。
「自分の骨って生まれて初めて見た。不思議と痛みは感じなかった。脳が痛みをブロックしていたのかも」
そばにいた同僚が救急車を呼ぶと、救急隊員たちは「病院ですぐ処置すべきだが、運転してくれる人がいるなら連れてってもらったほうがいい」とアドバイスした。仕事中の事故の場合、保険会社による労災認定が正式に確定するまでは、救急車の費用は自腹で払わなければならないため、下手すれば数千ドルの自己負担になってしまうからだ。
労災認定が下りるまで手術は先延ばし
同僚の運転する車で病院に駆けつけると消毒はしてもらえたが、労災かどうかを雇い主の保険会社が調査して判断を下すまで、手術は2週間先に延期となった。「骨が突き出ている箇所に絆創膏を貼られ、痛み止めを処方されただけ」とメルビンさんは言う。
部屋に戻って休もうとしても職住が同じ敷地内のため、ゆっくり休むことは難しかった。調査のうえ、労災に間違いないという保険会社の判定が出てやっと2週間後に手術が行われた。「突き出た第一関節分の骨を削って皮膚で覆う手術の間、ずっと意識はあった。手術後、麻酔が切れると、これまで感じたことがない強烈な痛みが襲ってきた」。
強い痛み止めを処方されると食欲を失い、眠りも浅くなったため、両親のいるミシガンの実家に帰って1週間ほど休養することにした。



















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