東武の収支計画で読むスカイツリーの成否、オフィス苦戦は織り込み済みも、ブーム一服後がカギ

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今年7月10日までは完全予約制で、入場チケットの販売を1日当たり1・4万枚に制限しているが、1日の最大入場者数は2万人。インターネットによるチケットの事前購入では、5月中の入場分は抽選となり、倍率は6・1倍(平均)に上った。5月7日時点までで、すでに約100万人分の予約が入っている。

チケットの販売状況や収用可能人数を考慮すれば、初年度の入場者数は計画を上回ることが期待できる。

さらに電波料収入がある。在京テレビ局の本放送開始は2013年からで、「稼働すれば20億~30億円の売上高は見込める」(JPモルガン証券の細谷仁詩アナリスト)。

東京ソラマチやプラネタリウム「天空」、「すみだ水族館」などからは賃貸収入が得られる。ソラマチには、都内最大級の312の店舗が出店。観光地向きの店舗だけではなく、首都圏初出店など地元住民にとって魅力的な店舗も誘致しており、SCとしての競争力は高い。

すべてが順風満帆というわけではない。17フロア、総面積約2・5万平方メートルあるオフィスゾーンの入居率は約25%と、厳しい状況にある。オフィスのテナント料は坪2万円と都心部に比べると安いが、「特に新宿などで賃料競争が激化しており、フロアを埋めるのは難しいのではないか」(バークレイズ・キャピタル証券・姫野良太運輸担当アナリスト)。東京ビジネス地区(都心5区)の空室率が9%台と高止まりする中、押上という都心部から離れた立地はやはりハンデとなる。

ただし、収支計画はオフィスの苦境を一定程度織り込んでいるとみられ、「オフィスが難しい状況でもそうそう赤字にはならないプロジェクト」(細谷アナリスト)。「今後は外資系メーカーなど、入居費用を抑制したい企業のまとまった入居はありうる」(みずほ証券の石澤卓志チーフ不動産アナリスト)。スカイツリー効果で東京東部の人気が高まる可能性もある。

計画どおりの営業利益が出た場合、2年目以降、毎年80億~90億円のキャッシュフローが生まれてくる。この水準が続けば、15年程度で投資額を回収できる計算だ。

直接的なスカイツリー事業とは別に、鉄道やシャトルバス、ホテル、飲食事業など、東武グループ全体で売上高82億円、営業利益24億円の利益貢献を見込んでいる。

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