「乳酸」は"疲労物質"じゃなく"脳のエネルギー源"。認知機能向上やうつ症状改善作用の可能性も――体に疲れをもたらす真犯人の正体は?
例えば、グラウンドを1周全力疾走すると、最後の直線で太ももがあがらなくなり、ついには感覚がなくなって脚が止まります。このときの太ももは、まさに筋肉が酸性化し疲労している状態といえるでしょう。
その後、水素イオンはさまざまな物質と反応して、やがて中和され、酸性化した筋肉はもとの弱アルカリ性に戻ります。ゴールした後、しばらく休んでいると回復し、また動けるようになるのはそのためです。
デスクワークで疲れを感じるのは
ところで、私たちは運動をしていなくても疲れを感じます。
例えば、長時間椅子に座ってデスクワークをすると、肩や腰の筋肉に疲れを感じることがあります。このとき、筋肉はほとんど動いていないので、筋収縮によってエネルギー切れになっているとは考えにくい状態です。
しかし、長時間同じ姿勢をしたことで筋肉の血液の流れが悪くなり、酸素の供給が不十分となります。そうなると、ミトコンドリアでの代謝が十分に行えず、水素イオンが多く出ていると考えられます。
さらに血行が悪いと、水素イオンが血液によって洗い流されずに筋肉組織に留まってしまいます。このような不活動状態が続いても、筋肉の酸性化は起こり得るのです。
また、筋肉はさまざまな物質を産み出します。なかには、神経を刺激して痛みを引き起こす物質もあります。これらも通常はすぐに血液により流されますが、血行が悪いと筋肉組織に溜まってきて、張りや痛みの原因となります。
ここでは筋肉の疲労について述べてきましたが、精神的な疲労もあるでしょう。
肉体が疲れることを末梢性疲労といいます。一方、睡眠不足のときや長時間作業をしたときにも疲れを感じます。このときの疲労を中枢性疲労といいます。
筋肉が疲れているわけではなく、その気になれば強い力を発揮することもできるのに、集中力がきれたり、眠気を感じたりするのです。中枢性疲労と末梢性疲労はそれぞれ別のメカニズムで起こります。ひとくちに疲労といっても、その種類や仕組みは複雑であることがわかります。
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