わが社がまさかの“債務超過”!? 衝撃を呼ぶ退職給付会計の基準見直し
新基準適用は13年4月1日以後開始する事業年度から適用される。つまり、上場企業の多くを占める3月本決算会社では、来期の14年3月期から適用することになる。
「会社四季報2012年1集 新春号ワイド版」では、退職給付債務を徹底調査。その結果、全上場企業のうちKNT(12月本決算会社)と川上塗料(11月本決算会社)が新基準適用で債務超過に陥る懸念がある(新基準適用までの期間利益の積み上げは考慮しないベース)。
12月決算会社のKNTは14年12月期から、11月本決算の川上塗料は14年11月期から新基準適用になる。これら2社のうちKNTはもともと純資産の薄さが経営課題。大株主の近畿日本鉄道などによる資本増強策が、今回の会計基準変更で動き出す可能性がある。
裏を返せば、これら2社以外では、債務超過に陥りそうな上場企業は存在しない。しかし、債務超過に陥る可能性のある上場企業が存在することは由々しきことではないか。
そうした影響は考慮したのか、という東洋経済の質問に対して、小賀坂主席研究員は、「基準改正は投資家のためのもの。(未認識の退職債務は)これまでも注記に開示されているとはいえ、バランスシートに記載されていたほうが投資家にとって有用。会計基準改正による経済社会へのインパクトはつねに念頭に置きながら議論している」と強調した。
「債務超過は上場廃止基準に抵触する。退職債務の新基準適用による債務超過が上場廃止基準の抵触と見なされるケースを考慮したのか」という東洋経済の質問に対しては、東証出身の新井副委員長が、「会計基準が決まってからでないと取引所のルールは変えられないもの。今回改正が決まったのだから、それを踏まえて関係者が判断する形になる」と、取引所ルールの変更の流れを説明。