わが社がまさかの“債務超過”!? 衝撃を呼ぶ退職給付会計の基準見直し

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毎期毎期の引当額は「退職給付費用」として、営業利益の減益要因となっている。費用計上された退職債務のうち実際にはまだ退職者に支払われていない分は、退職給付引当金としてバランスシートの負債の部に計上される。

まだ引き当てられていない退職債務は、費用計上されていない、つまり費用として認識されていないという意味で、「未認識の退職債務」と呼ばれる。この未認識の退職債務は、バランスシートの注記に金額が記載される一方、費用認識されていないことから、バランスシートに計上されていない。

資産や負債をバランスシートに計上しないことを「オフバランス化」すると言う。未認識の退職債務は、現在の会計基準ではオフバランス化されている。

今回の改正では、この未認識の退職債務を「退職給付に係る負債」という項目名でバランスシートに負債計上する。一方で、純資産の部の「その他の包括利益」に「退職給付に係る調整額」として同額のマイナス項目を計上。バランスシートの右側で調整し、左側の資産の部は増えも減りもしない。

その他の包括利益のマイナス項目が増えるだけであり、損益計算書のうち売上高から税引き後の利益段階まで、一切影響しない。今回の新基準の影響で繰延税金資産を新たに計上することになった場合でも、その税効果は税引き後利益に影響せず、その下の利益段階である包括利益にのみ影響する。

つまり、前回の基準変更と違い、今回の制度改正は、税引き後利益までの企業収益には一切影響しない。しかし、だから安心、と言うのはまだ早い。新しい退職給付の会計基準は、バランスシートの負債を増やし、純資産を減らすので、純資産が少ない企業にとっては、債務超過に転落するリスクがあるからだ。

 

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