
雑木林の道の先
七月十日の午後七時、奈央は駅前の商業施設から、自宅へと向かって歩いていた。夜になっても気温があまり下がらず、歩いているだけでも背中に汗が滲む。アスファルトが熱を持っているんだろうと思う。
背中の汗とは別に、額には熱くも冷たくもない水滴のような汗が噴いていた。もう子供テレビは放映されているんだろうか。わたしの姿は映されているんだろうか。駅から離れるにつれて、人の姿は疎らになり、街路を歩く人は奈央だけになる。
やがて奈央は、雑木林の道へと差し掛かる。駅から自宅までのどこかで人殺しをするならば、この通りが最も適していると思う。
雑木林の道の先は、緩やかなカーブになっている。一本の街路灯があり、夜闇の中で蛍光灯が点いたり消えたりを繰り返している。
奈央はその街路灯へ向かって、雑木林の道を歩き始める。途端にひんやりとした空気が辺りに漂い、背中の汗は乾いていく。日中も日が差さないから、アスファルトが冷たいままなのだ。一方で額の汗は、するすると頬を滴り落ちていく。
道の左手は、草木が生い茂って鬱蒼としている。道の右手は、竹藪になっている。竹藪の側はなだらかな上り傾斜で、地元の人からは天狗山などと呼ばれている。




















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