まるで殴られたかのように、ふらふらと何歩かあとずさっていく。そして男児が泣きごとをもらすように言う。
「ひ、ひどいよぉ、嘘をつくなんてひどいよぉ……。僕は奈央のこと信じてたのに、やる気も殺る気も満々で今夜を楽しみにしてたのに……。僕を騙すなんて、ひどいよぉ……」
よく見ると、タイソン二世は顔の上に、人の形の皮を被っているようだった。月明かりの下で、そのずれた皮を不器用に直すと、背広のボタンに向かって言う。
「し、し、し、執行猶予となります」
そう呟き、うなだれて、とぼとぼと草地を歩いていく。
奈央はトタン壁に手をついてどうにか立ち上がり、ワイシャツの袖で口元を拭った。
タイソン二世のうしろ姿はゆっくりと遠のいていき、最後にはふっと暗闇へ紛れた。
捏造された動機は、本当の動機
*
──こんにちは、ジョン・万次郎です。
──通信部への接続がないようなので、DMにて失礼します。
──えぇ、我々はあなたの動機の一部が、捏造されていることに気づいていました。しかし捏造された動機は、本当の動機で、あなたの死にたいという願いも、本当のものだと判断しました。
──でもどうやら、我々の判断は間違っていたようですね。
──タイソン二世が執行をしくじるなんていう結果が、図らずもその証明となるでしょう。
──今回の案件はこれにて終了させていただきます。本当なのに虚構という物語みたいなレポートに、同盟はたいへん満足しています。
──もしまた死にたくなりましたら、ぜひ子供部屋同盟へご連絡ください。
──いつでもタイソン二世を向かわせますので。
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