釧路湿原だけじゃない…再エネ発電施設が生態系に与える深刻な影響
国際サシバサミットに私は参加できなかったが、そこでポスター発表を行った埼玉県小川町の鈴木邦彦さん(73歳)の報告を聞いて驚いた。「フィリピンや台湾の発表者たちから再エネ発電施設による影響について心配する声が上がっていた」というのだ。どういうことなのだろうか。
国際サシバサミットで発表を行った「Raptor watch network Philippines(フィリピン猛禽類観察ネットワーク)」に連絡したところ、アレックス・ティオンコさん(74歳)とテレサ・サーベロさん(71歳)がズームによるインタビューに応じてくれた。
2人が活動してきたのは、フィリピン・ルソン島北端のカガヤン州の沿岸地帯。アジア猛禽類ネットワークによると、この沿岸地帯はサシバの渡りの一大中継地。毎年、3月中旬~4月中旬に南方から3万8000羽ものサシバが到来し、台湾に向けて渡っていく。
その「渡り中継地」で何がおきているのか。2人が発表で使った図の北端のエリアには、ピンクとグリーンの色に塗られた場所がある。ピンクの場所には洋上風力発電、グリーンの場所は沿岸に風車群の建設が計画されているという。
ただし、「風車が何基たつのか、高さを含め、計画の詳細はわからない。外国の資本、コンサルタントが主体となっているようですが、それもはっきりわからない。このエリアにすでに建っている風車による鳥類への影響についての調査研究もない。私たちは専門家ではないし、詳しいことはわからないが、すごく心配している」とテレサさんは話す。
というのも、2人は、地図上のピンクに塗られた箇所とグリーンの箇所のちょうど間にある小さな町、サンチェス・ミラで、サシバが大量に到来する春先に伝統的に行われてきた主に食用にするための「サシバ猟」の根絶に取り組んできて、その成果が表れたところだからだ。
子どもたちが大人たちに働きかけ、激減したサシバ猟
14~17年、フィリピン猛禽類観察ネットワークのアレックスさんたちは猟をやめるよう、ハンターたちに働きかけた。「最初に狩猟者たちにサシバを撃つのはやめてほしい、と頼んだ時、彼らは怒り狂い、『まるで火星から突然やってきた人たちからコメを食べるのをやめろ、と言われたようだ』と言い放った」(アレックスさん)。
アレックスさんたちが年配のハンターから聞いたサシバ猟の歴史はこうだ。サシバが渡って来る時期は、乾季(ドライ・シーズン)の最中で当時灌漑設備はなく、雨も降らないので、田植えなど米作りに入れない。ちょうどモンスーンの時期で、舟一艘で漁に出る漁師たちは漁に出れない。住民は「食べ物がない時期の神のご加護」と受け止め、サシバ猟を行ってきた。



















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