釧路湿原だけじゃない…再エネ発電施設が生態系に与える深刻な影響

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さらに、再生可能エネルギーによる発電のなかでも、風力と太陽光による発電は、最も「害」が少ないと見る。とはいえ、適切に計画され、運用されなければ、生物多様性に著しい影響を与えてしまう、と断言している。

その根拠として挙げられている研究論文の中には、風車への衝突死や、風車群を避けることで使える餌場が少なくなったりする鳥類への悪影響だけでなく、太陽光発電施設も大きな影響を及ぼしていることを明らかにしたものもある。

多くの再エネ発電施設が建てられ、また生物多様性が豊富なことで知られる米カリフォルニア州で米国の研究者らが行った調査では、夜に渡りを行う鳥類の太陽光発電施設での死亡が目立つことに着目。太陽光パネルが月などの光を反射して湖のような大きな水域があるように見えてしまう「湖効果」により、カイツブリやアビ類などの水鳥が誘引された可能性があると示した。

こうした調査研究の結果を受け、白書は、大規模な再エネ発電施設は、都市や工業地帯での工場、倉庫、配送センター、販売所などの屋根の上を中心に広げていくべきであるとし、国や地方政府が立地場所を選び、計画を進める必要性を強調した。

東南アジアの自然保護グループから懸念の声が上がる

IUCN・ジンジャーの報告書や白書をみると、米国や欧州で再エネ発電施設による自然生態系への影響についての調査研究が進んでいることがわかる。一方、東南アジアでは、日ごろこうした文献を目にしているわけではない住民たちが野鳥観察や保護活動を続けるなかで、再エネ発電施設の建設計画に不安を感じ、声を上げ始めている。

中型の猛禽類で、渡り鳥のサシバの生息環境を守るための「国際サシバサミット」が10月25~26日、鹿児島県奄美大島で開かれ、日本のほかフィリピン、台湾、韓国などからの参加者が活動状況や調査報告を発表した。サシバは日本で生息数、生息域とも激減し、環境省レッドリスト(06年改訂版)で絶滅危惧II類に上げられている。

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