『原発不明がん』で逝った夫は「18日間自宅で生活できただけでも奇跡的だった」と医師。そばにいる家族には何ができるのか? 妻の葛藤

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“希少”と言われるだけあって、発生数が少ないがんは専門に診ることができる医師も病院も少ない。だが、国民の2人に1人が罹る病気と言われるようになって、周りにもがん経験者、サバイバーが珍しくなくなった。彼らは治療後、継続的な検査を受ければ日常の生活を続けられている。もはやかつてのような「不治の病」ではなくなったと言われるようになった分、私たちはがんを少し甘く見るようになっているのかもしれない。

あんなに律儀に、毎年人間ドックを受けていた保雄が、検査で見つからないがんで死んだ。これはもう事故や災害に遭ったようなものか、とため息が出た。

AIが原発不明がんや難病の原因解明に役立つ可能性

原発不明がんの決定的な治療法は今後見つかるのだろうか。

「難しいと思います。原発特定、推定ができる原発不明がんの場合は延命期間を延ばすような治療法が生まれてくるでしょうが、原発巣が見つからない場合、完全にがんを消し去って治癒するレベルの抗がん剤が見つかるのは、かなり先になるでしょう。

でも近い将来、遺伝子治療など全く違う形での治療法の開発が期待されます。近年、AI技術の進歩は著しく、当然、医学の分野にも活用されています。AIであれば今までに無い治療法を見つけたり、人間の医師では原因究明が難しい病気も発見できたりするのではないでしょうか」

全世界から集積されたビッグデータを利用できる時代は近いのではないか、と訊ねてみた。

「原発推定をするための遺伝子検査の利用はすでに始まっており、海外では日常臨床でも用いられるようになっています。日本でも遺伝子パネル検査で原発推定を検討しますが、検査に短くとも 、1、2カ月かかるので、東さんの場合は間に合わないと考え、行っていません。遺伝子の検査結果は国立がん研究センターに集積されており、登録すればアクセスは可能です。

また、原発推定のためのAI利用は研究ベースでは遺伝子検査の結果に基づいて始まっており、いくつかのAIアルゴリズムはオンラインでアクセス可能な状態です」

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