アナタが知らない「駅のホーム」の危険な世界 盲学校の歩行指導に同行したら見えたこと

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遮断機の仕組みについてもレクチャーを受けた(撮影:大澤誠)

同校のような取り組みを他校でも実施しているか、首都圏のいくつかの盲学校に問い合わせをしてみたが、「登下校時の列車の乗り降りの訓練はやっている」という程度にとどまった。

首都圏の駅では電車がひっきりなしに行き来することを考えれば、実際の駅を使って転落時の対処法を学ぶことはまず不可能。鉄建の担当者は「当社の施設をどんどん活用してください」と、受け入れに積極的だ。

健常者には気づかないことばかり

日本盲人会連合が2011年に実施した調査によれば、視覚障害者の約4割がホームから転落した経験があるという。そもそも視覚障害者にとって、駅は危険な場所なのだ。

同調査によれば、ホームから転落した理由として「方向がわからなかった」「慌てていた」といった回答が多かった。中には「人にぶつかって、方向がわからなくなってしまった」「人をよけようとしたら、ホームの端から転落した」といった回答もあった。

東京都立文京盲学校の木村利男副校長は「当校の教員ですら、ホームから転落したことがある」と言う。木村副校長が指摘する駅の問題点は、健常者には気づかないことばかりだ。

点字ブロックがすり減っても、張り替えない駅がある(撮影:大澤誠)

点字ブロックがすり減っても、張り替えない駅があるという。健常者は色で点字ブロックの存在を知ることができるが、肝心な凸凹がすり減っていては、視覚障害者は気づきにくい。

その点字ブロックにしても、朝夕の混雑時に乗客は点字ブロックの上で整列するので、視覚障害者にとっては歩きにくい。さらに、左側通行か右側通行か、駅によって違うのもまぎらわしいという。

ホーム転落を防ぐ特効薬がホームドアであることは論を待たないが、その設置は遅々として進んでいない。JR山手線は29駅中20駅にホームドアが設置されている。が、山手線と京浜東北線が並走する区間では、山手線ホームにドアがあっても、反対側の京浜東北線ホームにはドアがない。「ホームの片側にしかドアがないのでは、視覚障害者が混乱してしまう」(木村副校長)。

国土交通省は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年まで全国800駅にホームドアを設置する目標を掲げている。だが、ホームドアは日本を訪れる外国人のために設置するものではない。2020年といわず、もっとスピード感を持って取り組む必要がある。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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