北海道、青森、茨城、能登… 独自の活性化策で利用客を増やす地方空港
空港内にシネコン、温泉、テーマパークがある。こんな驚きの空港が、2011年7月にリニューアルされた新千歳空港だ。
国際線ターミナルビルの新規オープンに伴い、国内線ターミナルビルを増築し、国内・国際両ターミナルビルをつなぐ連絡施設も新設。これらのスペースにさまざまな施設をオープンさせた。
「飛行機利用者だけでなく、地元の人に楽しんでもらえる施設を目指した」と、ターミナルビルを運営する北海道空港の小澤徹営業第二部長は語る。空港ビルは近隣のアウトレットモールと無料バスで結ばれて、土日には多くの地域住民がバスに乗って空港にやって来る。
しかも、リニューアルには隠された狙いがある。シネコンの収容人員は377人。温泉施設には、100畳の大広間がある。仮眠や休憩に利用できるリクライニングチェア約280席を備える。これらは地域住民や、通常時の空港利用客の利用を見込むが、さらに「欠航時に利用客が寝泊まりできる施設が欲しかった」と、小澤氏は明かす。冬の新千歳空港は大雪で除雪が追いつかずに欠航することもある。そのため空港内で夜を明かす人も多い。温泉施設の大広間やリクライニングチェア、あるいはシネコンのふかふかな座席は、非常時には寝泊まり用の設備としての役割も果たす。つまり、新千歳空港のリニューアルとは単なる商業上の理由だけでなく、空港機能を向上させる役割も果たしているのだ。
日本の狭い国土には100近い空港が存在しており、その多くが利用者低迷に苦しんでいる。「政府の方針として多くの空港が整備されたが、それらの空港をどのように活用していくかという議論が、地方空港においては未熟である」と、航空行政に詳しい北海道総合研究調査会の切通堅太郎主任研究員は指摘する。
地方空港を取り巻く環境は厳しいが、一方で、独自の活性化を試みている空港も少なくない。知恵と行動力があれば、活性化は不可能ではない。何より、そうした空港の多くでは、「地元で航空政策を真剣に検討している」(切通氏)。こうした空港活性化の取り組みを紹介する。