「心がないと人には届かへん」74歳《ヒョウ柄おばちゃん》が語る、弱さを受け止める生き方→「ママ、彼氏に逃げられたぁ」と客の恋愛相談も受ける訳

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すると、母に脳腫瘍が見つかった。実は高橋さんは家庭の事情で、母とは血のつながりはなかった。「看病して恩返ししなあかん」と50歳で会社を辞めて、51歳で母を見送るまで夜はスナックで働き、昼に病院へ足しげく通う生活を送ったという。

「めちゃくちゃ忙しかったけど、元気やったね。なんでもこなせた」

それ以前、息子が小学4年生となった39歳から50歳までの11年間は、人材派遣会社で営業職に就いていた。デパート、スーパー、専門店などにスタッフを紹介する、高橋さんいわく「お人を動かす」仕事である。この時培った経験が、今のなにわ小町で生きているという。

大切なのは「どんな相手とも本音で話す」こと

人材派遣の仕事は、思った以上に大変だった。「どんな人を求めているか」企業の要望を素早くキャッチして、一瞬で気に入ってもらえる人を選ばなければならないからだ。

そこで学んだことのひとつが、「どんな相手とも本音で話す」大切さだったという。

「心がなかったら人と深いところでは通じひん。だからこそ、建前ではなく本音でぶつかるねん」

派遣登録している人たちと、とにかく必死で話をした。相手が言っていることが、「嘘かほんまかもわからへん」状態でも。最初の頃は失敗も多く、「自分は人を見る目がないのかもしれない」と落ち込んだ経験は数え切れない。

つけまつげがチャーミングなトラの新作カットソー(筆者撮影)

あるときは、昔の同級生が面接にきた。しゃべっている間に気づいたのだが、年齢も経歴も嘘をついていたそうだ。「嘘ついてまで働きにいかなあかんって何があったんかな」「こんな子やなかったのに」など、さまざまな思いが頭を巡った。

「人の裏まで見えてしまう仕事やった。それがいちばんしんどかったね。商品じゃなくてお人を売る、紹介するとはこれほど大変なことかと……。それを乗り越えてきたから今、誰と接しても怖いとかはなくて、表も裏も全部わかろうって思える。人見知りとか恥ずかしいとか、そんなんはもう二の次、三の次ですわ」

だからなのか、高橋さんはテレビで芸能人と話していても、「昨日こんなことあってな」「いや、全然儲からんね」とご近所さんと話しているよう。「嘘とか見栄とか一切ない」ありのまま。

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