前出の表のE欄に示したのは、C欄の数字を年利3%で割り引いた現在値だ。そしてF欄の数字は、この期間までの現在値の累積額である。
例えば、35~39歳階層の値が▲112万4700円であるのは、この時点までの大卒賃金の割引現在値が高卒賃金の割引現在値より約112万円少ないことを意味している。つまり、利子率が3%の場合には、この年齢階層まで逸失利益を取り戻せていないのだ。
F欄の数字がプラスになるのは40代の前半。利子率がゼロの場合より少し遅くなる。
現実には退職寸前まで進学費用を取り戻せない
F欄の数字が1000万円を超えるのは50代の後半だ。つまり、大学進学のために1000万円が必要であり、それを金利3%のローンで賄ったとすると、高卒との賃金差だけでは50代後半まで取り戻せないということになる。
50代後半とは、子育て期間も終わり、子どもが大学を卒業するような頃だ。この頃になるまで自分の大学進学の費用を返済できず、退職を意識するようになってやっと完済できるわけだ。
教育を「投資」と考えれば、それは「回収期間が極めて長い投資」だといわざるをえないのである。以上をまとめると、下表のようになる。

利子率が3%の場合、F欄の値は65~69歳階層でも1600万円程度でしかない。これは、冒頭で述べた「大卒と高卒で生涯5000万円の差」とは大きく異なる。利子率がプラスである場合に割引現在値で考えれば、「高卒と大卒の差はさほど大きくない」ということもできる。
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